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蜜が5滴 ページ6

『どうすれば鬼の所在がわかるんだろうね』




竈門たちの稽古を見ながらそう言った。



知らねばならない理由が自分にはある。
あの鬼の所在を突き止め、ありとあらゆるところまで調べ尽くさなければならない。




人の思考回路を簡単に読むことができたら、誰だって苦労はしない。
わからないからこそ、お互いに誤解を生み、関係が拗れていく。




「……私達には分かりかねます。他人の考えていることを読もうだなんて、無理な話ですよ」


『そう?僕はしのぶの考えていることならわかるけれど』


「……Aさんに心象を読まれると、どうも調子が狂います」




きゅ、とAの着物の袖を摘む。
愛らしい所作に、優しく胡蝶の頭を撫でた。




甘えられる人がいない。
齢18だなんてAからしたら全然幼くて。
いつも前線で戦う彼女は、隊士を率いる立場でいなくてはならない。



蝶屋敷にいるのも自分より年下。甘えられるわけがなかった。
心の拠り所であるAは長期任務のせいでおらず、視線は街中で彷徨うばかり。




何度この部屋に立ち入ったことか。
何度誰もいない縁側で思いを馳せたことか。




『……僕達は、いつになっても素直になれないね』




AもAだ。他界してしまった姉を求めるように、胡蝶に縋っている。




背丈が、香りが、風貌が、どこか自分の姉に似ていて。




掴めないと分かっていながらその手は彼女へ伸びる。
触れたはずの背中は余りにも小さく、儚い。
姉じゃない、姉はもう既に死んでいる。



それでも縋らずにはいられなかったのだ。




『寂しいね、しのぶ。』


「……いいえ、そんなことありません。」


『悲しいなぁ、そうだと言ってよ』




いつの間にか指は離れ、いつものように笑みを貼り付けた。




疲れ果てた様子の竈門がこちらを見つめている。
手を振れば、人当たりのいい笑みを浮かべて2人のもとへと駆けた。




「竈門くん、調子はどうですか、捗ってますか?」


「は、はい!なんとか!」




焦ったように胡蝶の質問に答える。
Aのことをちらりと見やると、深々と頭を下げた。




「竈門炭治郎といいます!よろしくお願いします!」


『うん、よろしく』




ふわりと微笑むA。
風がそっと髪を揺らす。




「……ん?」


『どうかした?』




風にのって流れてきたAの匂い。とても普通の人と同じとは言えない香りを纏っていた。




それは、甘く痺れる香りと、微かな刺激臭だった。

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作者名: | 作成日時:2020年12月22日 19時

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