蜜が24滴 ページ25
「アゲハさん!おはようございます!」
『アオイちゃんおはよう。僕も手伝うよ』
挨拶をする神崎の手から、大量の洗濯物を3分の2程受けとる。受け取るというか、奪うというか……
神崎としては少しばかり不満ではあるが、それ以上にAと話す機会が増えたことが嬉しかった。
普段は任務と研究の繰り返しで話す暇がない。食事運びはするが、Aの頼みにより素早く部屋から出ねばならない。
こんな和やかな時間が取れるのは久方ぶりだった。
『今日はいい天気だね、掃除も捗りそう』
庭で舞う蝶を眺めながらAはそう言った。
どこか懐かしむような顔。
「アゲハさんもお部屋の掃除を?」
『いや、今日は屋敷に顔を出しに行くよ。長らく会えていないから』
「蝶柱邸ですね、すぐ発ちますか?」
『あぁ。悪いね、こんなことしか手伝えなくて。』
Aの言葉に神崎は勢いよく首を横に振る。
それに伴い、結った二束の髪が揺れた。
"そんなことない"と必死に否定する神埼の様子に、Aは微笑む。
洗濯物を干し終え、神崎に手を振って分かれる。
とりあえず荷物は少なくてもいいだろう。
簡単に用意をし敷地を出る。
のんびり歩いていると、遠くから不死川が近付いてきた。
『不死川君、おはよう』
「どういうつもりだ、蝶柱さんよォ」
『……何が?僕なにかやったかな』
「とぼけんな、お前の部下、随分任務サボってるそうじゃねえか」
困ったように笑っていたAの顔が固まる。
そんなわけない。怖がりの子はいるけれど、責任を果たさない者なんていないはず。
それに、任務に出ないなら文を飛ばすはず。けれど一通も来たことがない。
おかしい、何かがおかしい。
『その話、詳しく聞かせてもらえるかな』
Aがそう聞くと、不死川は表情を変えることなく言葉を続けた。
「どいつも言っている、誰も任務に顔出さなくなったってなァ」
『…ありがとう、皆に謝っておいてくれ』
「おいアゲハ!!」
不死川の静止の声も聞かず、足を動かす。ドクドクと心臓が脈打ち嫌な予感が頭をよぎった。
急げ、早く向かわないと。
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作者名:諒 | 作成日時:2020年12月22日 19時