【鬼滅】鱗粉ヲ纏フ緑蝶【男主】 (ページ24)

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蜜が23滴ページ24

『ん、ふふ』

「そ、そんなに笑います……？」

『だって、んくくッ』

体を震わせAは穏やかに笑った。
彼自身大笑いすることは少ない。酒が入ったらそりゃ笑うが、それくらい。
じわりと滲んだ涙をそっと拭いながら言葉を続けた。

『ごめんねぇ、そんなこと言われるのは初めてで面白くって』

心配されるなんてのは生まれてこの方初めてだった。そもそもこんな話を人にしないということもあるが。

随分前のこと、上官にこのことを話した。
けれど同情の目は向けてもらえなかった。瞳の奥に見えた色は喜び。信頼していただけあって幻滅してしまった。

"それが古からの慣習だから"と多くの人が言った。
だからこんなにも心から同情してくれる人がいることが嬉しくて。

『ふふ、ありがとう、こんなこと言われるのは初めてだ。けれど大丈夫。手伝ってもらうほど僕の生は長くない。』

「そ、それってどういう、」

「アゲハさん、ここにいらしたんですね」

入り口で笑みを浮かべながら胡蝶はそう言った。
手には盆に乗せられた食事があった。

続けて真意を聞きたいところだが、胡蝶がいる場では聞きにくい。意図的に入ってきたような……疑りすぎだろうか。

「昼食はこちらで摂られますか？」

『……いや、部屋まで持ってきてくれ、僕はもう戻るよ。じゃあね、竈門君』

「あ、はい！」

流れるように頭を撫で、Aは部屋を出ていった。
しん、と部屋が静まる。入れ替わるように、胡蝶がベッドの横の椅子に腰掛けた。

「すみません、随分話し込んでいらっしゃったのに遮ってしまって」

「あぁいえ、……アゲハさんは、話したくないみたいでしたから」

先程頭を撫でた際、彼の匂いが変わった。
今まで感情は香のせいではっきりわからなかった。だけど、最後だけは違ったはず。

悲しみと、決意。そんな匂い。

悲しみは……現状を嘆いているようではなかった。
あれは……懐古……？わからない、細かいところまでは判別できなかった。

「竈門君、アゲハさんがここにいる間は守って欲しいことがあるんです。」

「守ってほしいことですか？」

「えぇ。……彼が___Aさんが食事をする際は部屋に立ち入ってはいけません。如何なる理由があろうとも。」

"それだけです"と微笑み、胡蝶は部屋を出ていった。

今の今で情報量が多すぎる。何だあの含みのある言い方は。
気になることだらけで何となく食事は上の空だった。