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蜜が21滴 ページ22

『久しぶり、竈門君』


「アゲハさん!こんにちは!」


『はい、こんにちは。薬持ってきたよ』


「ありがとうございます!!」




薬を手に、Aはベッドの横の椅子に腰掛ける。
Aお手製のそれを渡せば、竈門は素直にそれを嚥下した。



無味無臭。18を超えた相手には配慮なんてしないが、年齢を加味して直々に薬の調合に手を貸した。
竈門に限ってそんなことはありえないが、味のせいで服薬を止めてしまったら意味がない。それを防ぐためでもあった。




「あの戦いで無傷だなんて、アゲハさんはすごいですね」




竈門はAの顔を見て笑う。そんな言葉にAは俯いた。
"自分も頑張らないと"と言いかけたところで、暗い雰囲気に勘付く。
悲壮と、後悔の匂いがした。




『……あれは付き纏う呪いのようなものだよ』


「呪い、ですか?」


『……墓場まで持っていこうと思っていたんだけど、君には話そうか。』




儚く笑い、少しずつ話し始める。
この話をしたのは何人目になるのだろう。



誠実そうな竈門の目に揺らいだ。話す気なんて微塵もなかったのに。




『昔____鬼が生まれた時代。上羽一族は鬼の供物とされていた。村を守るために』




そう書物に記されていた。これは嘘偽りのない事実のようで、会った鬼にもそう言われた。長く生きている鬼ほどそう言った。




『蝶の呼吸の使い手は腕に蝶の刺青を掘られる。そして蝶の鱗粉を塗られるんだ』


「じゃあアゲハさんにも?」


『もちろん。これが結構綺麗でね』




来ていた着物を少し着崩して肩を見せる。
左の肩には翠の蝶が彫られていた。見惚れてしまうような、今にも飛んでいきそうな蝶。




「本当に、綺麗……でも何で鱗粉を?」


『鱗粉は美味いんだ。それがほんの少しだとしても、血中にあるのと無いのじゃあ天地ほどの差がある。』


「……それが呪い、ですか」


『まぁそんなところ。美味い代わりに、外傷があるだけで鮮度が格段に下がる』




Aが上弦と対峙しても傷1つなかったのは、食糧としての質が落ちるから。
手負いの者はとても食べられたものじゃない。冷たくなった死体を貪った方がマシなほど。



傷が治れば鮮度は元に戻るが、鬼のように瞬く間に傷が治るわけじゃない。
だからといって、鬼にしてしまうと味が変わる。
だから、生きた状態かつ傷がないうちに捕食せねばならない。



蝶の呼吸の使い手は鬼に守られているとも言えた。
まぁ、それ以上に苦悩はあるのだが。

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作者名: | 作成日時:2020年12月22日 19時

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