蜜が13滴 ページ14
「それが____」
「千詠羽花魁が、いない?」
「はい……とても足抜けしたとは思えません……俺はてっきり宇髄様と逃げ出されたのかと……!」
「……参ったな…」
卯月屋にて。
妓夫は困ったような表情を浮かべる。目の端には薄っすらと滴が現れていた。
心配、恐怖、混乱____彼の音は本当に混乱している様子。
一体どうなっている?
昨日は自分の指名で会うことができた。なのに何故。昨晩のうちに何があった?
考えてもわからない。そろそろ定期連絡のため集まらねばならない。
悶々と考えながらも宇随は建物の屋根に上がり、花街を見下ろした。
「善逸は来ない。アゲハも、行方不明だ。」
「どういうことですか?」
嘴平も竈門も訝しげな表情を浮かべる。
柱であるAが行方不明になったという報告は、彼らを不安にさせるには十分すぎる情報であった。
「消息を絶った者は死んだと見做す。それはアゲハも例外じゃない。後は俺1人で動く。」
「いいえ宇髄さん!俺たちは……!!」
「恥じるな、生きてるやつが勝ちなんだ。機会を見誤るんじゃない。」
「待てよオッサン!!」
瞬きの間に宇髄は姿を消した。
速すぎる移動に2人は呆然とする。いや、こんなことをしている場合じゃない。一刻も早く2人を探さなくては。
決戦は今夜だ。じゃなきゃ2人___否、5人は救えないかもしれない。
夕刻。
化粧を落とし、着物から隊服へ着替える。
鯉夏は、見違えた格好の竈門に驚きの表情を浮かべていた。
「1つだけ、聞かせて。千詠羽ちゃんがいなくなったのは、本当?」
「……はい。彼女……いえ、彼も行方を眩ませました。」
「そう、なの……」
人当たりがよく、誰にでも分け隔てなく接するA。
そんな千詠羽のことが、鯉夏は大好きだった。ああなりたいとも思った。
慕っていた人だから、余計に悲しく、不安になる。
「大丈夫です、必ず見つけ出します。須磨さんと一緒に。」
「…ありがとう、少し安心できたわ」
儚く笑う鯉夏に、竈門は頭を下げてその場を去る。
いつの間にか日は沈み、辺りを闇が包み込む。
鯉夏の部屋に、どこか蕨姫に似た女性が姿を表した。
目には"上弦"と"陸"の文字。鬼殺隊が探しに探していた鬼であった。
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作者名:諒 | 作成日時:2020年12月22日 19時