【鬼滅】鱗粉ヲ纏フ緑蝶【男主】 (ページ11)

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蜜が10滴ページ11

「____そしてもう一度言う、俺は神だ！！」

ぽかんとする3人。
Aはというと、もうこんなのは慣れっこなためスタスタと前を歩いていた。
どうせすぐに追いつくだろう。こんな距離の差なんて1秒にも満たない。

後ろでぎゃいぎゃい騒いでいるのを聞きながら、Aは飛んできた蝶と戯れていた。………のだが。

『うわッ、何で担ぐの！？』

「口閉じろ、舌噛むぞ」

頼んでもいないのに担がれ、命令され……踏んだり蹴ったりである。
死んだ目で揺られながら、一行は藤の家紋の家に到着した。

『さて……化粧の前に説教だ。いいね、宇髄君。』

「おいおい、何で俺が、」

『次に君が話すのは僕が許可したときだ、いいね？』

Aは冷たく目を細める。
その顔に笑みなどは微塵もなかった。

普段穏やかな彼からは想像もつかないほど冷たい雰囲気をまとっている。
誰1人として、割って入る程の度胸を持っている者はいなかった。

『1つ。僕は過去に何度も言った、女性相手に乱暴はするなと……まさか、忘れてしまったのかい？』

宇髄はふるふると首を振る。
先程とは打って変わって静か。借りてきた猫のようだ。

『2つ。相手の意見に耳を傾けなさい。無理矢理我を通すのは愚か者がすること。
3つ。君が柱だから、上官だからといって人に手を上げていい理由にはならない。次は無いよ、いいね。返事は。』

「……わかった」

静かに頷く。それにAは優しく微笑んだ。

別に逆らえないわけじゃない。師弟関係でもない。
ただ、Aが言っているのは至極真っ当なこと。今まで浴びせられた言葉は、反論の余地がないのだ。

『よろしい。……それと竈門君。僕は前回の柱合会議に出席できていないけれど……お館様に口の利き方を注意されなかった？』

「ぅ、されました……」

『言葉というのは本人だけでなく周りをも不快にさせてしまう。気をつけねばならないよ』

「……はい、気をつけます。」

『うん、素直ないい子。』

蝶屋敷の面々にしてきたように頭を撫でる。
温かい手がなんだか照れくさくて、竈門は軽く頬を染めながらはにかんだ。

『さてと……僕は少し着替えてくるよ。宇髄君、手伝って』

「おー。髪は？」

『また後で頼もうかな』

風呂敷を手に2人は退室する。
襖が閉まった瞬間、張り詰めていた空気が解けていった。