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蜜が1滴 ページ2

翠の髪を揺らして歩く。
街で彼を見た人は皆振り向く程、彼の顔は整っていた。




稽古の休憩中。落ち着いた雰囲気の蝶屋敷は、賑やかな雰囲気に包まれていた。
歓喜、驚愕、安堵____雑多な音を聞いた我妻は首を傾げていた。




「何だろ、誰か来たのかな」


「……あれじゃないか?」




蝶屋敷の皆が誰か1人を囲んでいる。
輪の中心は、背の高い綺麗な人。我妻と目が合うと柔らかく微笑んだ。




「え、待って、めちゃくちゃ綺麗じゃない!?嘘、えー!!!」




乙女さながらの反応を示す。相変わらずの様子に竈門は苦笑い。嘴平は気にも留めていなかった。




女物の着物を着ているにしては少々背が高い気がするが……きっと人それぞれなのだろう。
少し離れた場所で見守っていると、輪の中にいた胡蝶しのぶが、自分たちに手招きをした。




「紹介します、こちら右から我妻善逸、竈門炭治郎、嘴平伊之助です。こちら、蝶柱の上羽Aさん。」


「近くで見ると超キレイ!!!!!」




くねくねと女々しく体を動かす我妻。
しかしその動きもすぐに止まることとなった。




『紹介の通りだ、どうぞよろしく。僕のことは"アゲハ"と呼んでくれ、苗字呼びは慣れていなくてね。』




凛とした声が耳に届く。
一瞬僕という一人称は個性だ、地声が低いだけかもしれない、と信じ込んだ。
が、紛れもない男だ。騙された。一時の恋心を返してくれ。



我妻は手のひらを返したように態度を変える。
他に見ない雰囲気に、Aは笑う他無かった。




『そうだ、湯を張っておいてくれ。それと食事も用意してほしい。』


「わかりました!」




たたた、と軽い足音で駆けていく屋敷の一員。
微笑ましく見守るAは、思い出したように胡蝶の名を呼んだ。




『しのぶ。土産だ、使うといい』


「お土産、ですか?」


『あぁ。きっと役に立つからね』




風呂敷で包んだものが甲高い音を立てる。硝子同士が触れる音だった。
すん、と竈門は鼻を鳴らす。薬品の匂い。薬湯とは少しばかり違うが、効能は似たようなものだろう。




その後、軽く話してAは屋敷の奥へと姿を消した。




「実はアゲハさん、花魁として花街に身を置いているんです」


「花魁ッ!?男の!?!?需要あんの!?!?」


「あの顔で無いと思います?」




そう、つい昨日鬼を滅したばかり。
長い間の潜入捜査。少しばかりAも気疲れしていた。

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作者名: | 作成日時:2020年12月22日 19時

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