🍑落下する春 ページ6
JH side
※過激な表現を含みます。ご注意ください
永遠、なんてものがあるって信じたことはないけど、
終わりが来るとも思っていなかった。
ドラマの撮影やカムバの準備で久しぶりに会ったAを抱き寄せたときに、こんなに細かったっけ？と驚いた。
痩せた？と聞けば、今日パスタ2人前食べたんだけど？と言われ、そんな言葉で安心していた。
Aの病気が見つかったのは、それからすぐのことだった。
治らないらしいと聞いた時、俺はステージの準備をしていて、電話越しに淡々と話すAの声がフィクションの作り物のように感じて、理解するのに時間がかかった。
会う場所がAの家ではなく病院に代わり、会うたびに細くなるAのことを見るのが辛くて、忙しいを言い訳にだんだんと足が遠のいてしまった。
忙しかったのは本当のことだ。
だけど時間を作ろうと思えば作れたのだって本当のこと。
会うのが怖かった。
後悔すると分かっていても、少しずつこぼれ落ちていく現実を受け入れるのが、
どうしようもなく怖かった。
「ジェヒョンは死ぬまでにしたい100の事って何かある？」
「、何だろうね」
「そんな顔しないでよ」
「………じゃあ死ぬなんて言うな」
「ごめんね」
馬鹿みたいだ。
どれだけ願っても運命が変わることはない。
神様なんていない。
分かっているのに、全部嘘で明日には全てが元通りになることを望んでしまう。
Aは気まずそうな顔をしてマグカップに口をつける。
それは初めてAの家に行った時に、
お揃い買っちゃったんだと照れながら見せてくれたものだ。
最後に会った日よりも細くなった腕にはマグカップですらも重たそうに見える。
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作者名：ロク | 作成日時：2022年12月25日 22時
