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洗面台で最後の仕上げとしてリップを塗ろうとすると、
ナナがやってあげると言い手に持ったリップを奪い取られてしまった。
丁寧に縁から塗っていくジェミンの顔を眺めながら、
すっぴんなのにまつ毛長くていいなあ、
とどうでもいいことを考える。
「本当に行くの？」
「行くよ」
「ナナがいるのに？」
「関係ある？」
「浮気者……」
「浮気って人聞きが悪いな」
うるうるした瞳で見つめられると罪悪感がじわじわと湧き上がってくる。
でも約束は守らなきゃいけないし、久しぶりに同級生たちにも会いたい。
罪悪感を押し潰しつつ玄関まで来たところで、シュッと首の後ろに香水がかかった音がした。
ふんわり香るのはいつもの自分の香りではなく、ジェミンの香りだった。
なんで？という代わりに見つめ返せば、
マーキングだよと言ってドヤ顔をしてきた。
マーキングって本格的に犬みたいだな。
「行ってくるね」
「お店に着いた時に連絡して。あと30分に一回連絡するから返事も絶対にして。お店出るときと電車に乗ったときも」
「ええ………」
「迎えに行くのもダメなんでしょ、そのくらいはナナのためにできるでしょ。出来ないなら行かないで」
「わかった、じゃあ行ってきま〜す」
「A、待って」
忘れ物、と言ってちゅっとかわいい音と立てて
柔らかい感触が唇に触れた。
「こんなにかわいいちゅ〜出来るのナナだけだよ」
とかわいい呪いをかけられる。
一瞬で赤くなったであろう顔がばれないように、
行ってくると大きい声を出して玄関の扉を閉めた。
あ〜、もうリップ取れちゃったじゃん。
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作者名：ロク | 作成日時：2022年12月25日 22時
