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「もう無理だよ」
涙は落ちなかったけど、語尾が震えてしまった。
「無理じゃないよ」
「もうヤンヤンのこと信じられないもん」
「ごめんって、次からちゃんと連絡するから」
「いつもそう言うけど守ったことないじゃん」
「ごめん、でも俺はAが好きだよ」
「私はもう好きじゃない」
「うそつき」
「嘘じゃない」
「ねえ、Aこっち見てよ」
優しい声に心が揺れる。
泣きたいのはこっちなのに、ヤンヤンが泣きそうな顔でこっちを見つめてくる。そんなのずるい。
テーブルの上で握られた手を引き止めるようにキュッと力を込められる。
初めて手を繋いだ時に「Aの手あったかいね」と言われて、自分の手があったかいことを知った。
いつも飄々とした態度を取っているくせに、耳だけ真っ赤にしていたことを忘れられない。
嫌いになりたいのに、思い出すのは好きなところばかりで嫌になる。
お待たせしましたーと空気を読まない店員の明るい声。
何かを言えば涙が落ちてしまいそうで、黙るしかない。
その時点で私の負けが決まっているようなものだ。
テーブルの真ん中に置かれたパフェとプリンは見るからに甘そうで、それだけで胃がもたれる。
ヤンヤンの水分量の多い瞳が安っぽい電灯に照らされてきらきらと反射する。
「別れたくないよ」
もう一度縋り付くように力を込められた手を私は振り払うことができない。
ああ、また今日も離れられない。
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作者名：ロク | 作成日時：2022年12月25日 22時
