2 ページ12
.
遠くから水音が聞こえ、しばらくしてぺたぺたと足音がきこえてベッドがぎしっと沈んだ。
背中にAがくっついてきたけどつい振り払ってしまった。
「暑いからひっつくなって」
咄嗟に出た言葉が思ったよりも冷たい声で、自分でもびっくりした。
やってしまったと思ったけど、行動にしてしまったらもう遅い。
背中にくっついた温もりが離れていくのがわかった。
怒りたいわけじゃないのに、怒らせるようなことをするAが悪いんだ、と自分を正当化する。
「ロンジュン、」
「 、なに」
「怒ってる？」
「べつに」
「…………でも、」
「ただちょっと呆れてるだけ」
本心だった。余計な心配はしたくない。
ただでさえフラフラしててほっとけないAなのに、1人で帰れなくなるほど酒に逃げないでほしい。
最近忙しいのはヤンヤンから聞いていたし、いっぱいいっぱいになってるのも知っていた。
だから本当は行くなと言いたい飲み会も許可して、自由にさせている俺の本当の気持ちに気付いて欲しい。
そもそも何かあるなら幾らでも話聞くのに、Aはそうしない。
Aは甘えるのが下手だし、俺は甘えさせるのが下手だ。
お互いしょうもないプライドを捨てて寄りかかることができればいいのに、それがどうしても難しい。
どれもこれも頼りない俺のせいかと思うとなんだか苦しかった。
「ねえ」
嗚咽と共に聞こえる声が震えていた。振り返ってAに覆いかぶさる。
そして噛み付くみたいな乱暴なキスを繰り返す。
顔の横に置いた肘を撫でるようにAが触るから愛おしくて仕方がなくなる。
「、きらいにならないで」
消えいるような涙声が聞こえて思わず動きが止まる。
切ない声に俺まで泣きそうになってしまう。
こんなに好きなのに、どうして俺はAを追い詰めてしまうんだろうか。
ああ、負けだなあ。やっぱり俺はAじゃなきゃダメなんだよ。
Aがすきなんだよ。
「…だったら1人で帰ってこい、ばか」
今日も愛おしさが勝ってしまったから、それがバレないようにシーツごとAを抱きしめる。
安心したかのように俺に近づく彼女。
Aから自分と同じシャンプーとボディーソープの香りがすると心底ホッとする。
どこへ行ったとしても帰ってくる場所はここであってほしい。
それにしてもほっせーなあ、腰。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 551人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ロク | 作成日時：2022年12月25日 22時
