☀️行方知らずの恋心 ページ8
※00生まれ 紅一点設定
HC side
複数人での撮影が始まってAと何人かメンバーたちは楽屋を出て行った。他のメンバーもメイクを直しに行ったりトイレだったりでどこかへ行ってしまい、さっきまで人が多かった楽屋は1人きりになってしまった。
普段感じることはほとんどないのに、こういうときに少しだけ寂しく思う。
Aが座ってたソファに移動すると低いテーブルの上に書きかけのアンケートがあった。項目を一つずつなぞるように眺めていると睡魔がやってくる。
綺麗に畳まれたブランケットを頭から被るとAの匂いがした。
あー、髪の毛崩れちゃうな。
「あれ、みんなはー？」
「どっかいった」
「どっかって？って何してるのそこで」
「これ、見ちゃったー」
「見ちゃった。じゃないよ」
返して、と手を伸ばしてくるA。
俺の方が腕が長いから上手く掴めないようで、頬を膨らませて怒った顔で見つめてくる。
ちなみにこれは本気で怒ってる顔ではない。
「返してくださーい」
「そこ座ってよ」
「え？」
立ったままいるAに顎でソファの隣に座れと指示を出す。
もー、何？と言いながら素直に腰を下ろしたAの膝にブランケットをかけて、その上に寝転んだ。
丁寧に縁取られた顔は、下から見上げても360度どこから見ても綺麗だ。
いつのまにか幼なさがすっかりなくなった顔を見ながら過ごした時間の長さを想う。
「やせたね」と俺の輪郭をなぞるAの冷たい手。
「質問、恋してますか？答え、ファンの方にいつもこいしています…ねえ。質問、結婚願望は？答え、今はないです。結婚して家庭を築いてるイメージがわきません」
「…なに、悪い？」
Aに初めて好きだと伝えたのは、お互いがNCTという枠組みに入れられた日だった。
「ドンヒョクのことは好きだけどそういう関係にはなれない」
と言った真剣な表情を見ながら諦めるという感情よりも、やっぱりこいつのことが好きだなという気持ちが勝ってしまった。
それから真剣にも冗談混じりにも、何度も好きだと言ったけれど、Aが頷くことはなかった。
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作者名：ロク | 作成日時：2022年12月25日 22時
