青春はサイダーのように (ページ44)

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44.「行こうか」ページ44

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見慣れない場所に一人で立っている。

緩やかに流れるBGMはオススメされて最近よく聞いていたあの曲に似ている。

きょろきょろと周りを見渡してみると、幼稚園の頃一度だけ行った古くて小さな遊園地にあったメリーゴーランドや、キャラクターのテーマパークのお城、近所の公園のブランコ、とにかくちぐはぐで奇妙な空間だった。

どこかに行かなきゃいけないような気がするけど、

ここはどこで、

私はどこに向かえばいいんだろう。

「大丈夫？」

聞き覚えのある声で振り返ると知っている人がいる。

私を見て心配そうな顔をしているのは分かるのに、目の前にいる人の顔がよく分からない。

しっかりと見えているはずなのに、知っている人のはずなのに、

それが誰なのかを私は判断できなかった。

『大丈夫』

「Aはすぐどっか行くね」

『そんなことないよ』

「ううん、俺をいつも置いて行く」

『そうだっけ？』

「じゃあ行こうか」

『どこに？』

口を開いて何かを言った瞬間に風が大きく吹いて視界を揺らし、音を遮る。

もう一度聞き返そうとしても声が聞きとれない。

また困った顔をしたその人が手を差し伸べてくるので掴もうと手を伸ばす。

触れた瞬間に、その人は炭酸の泡がはじけるように消えてしまった。

BGMの音がどんどんと大きくなって

うるさいと言おうとしたところで目が覚めた。

夢か…

目が覚めたはずなのに音楽は鳴り止んでいないくて、

不思議に思いスマホを手に取る。

動画を再生したまま寝落ちしてしまったようで、自動再生でその曲のMVが流れていた。

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