43.「かわいい」 ページ43
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ジェミン終わった?
今終わって店出たところ
ジェミンじゃあ迎えに行く
迎えとは？と思ったけど、この後の予定は何もなかったし、
せっかく染めて綺麗になった姿を誰かに見せたかったからちょうどよかった。
外で待つのはさすがにしんどくて駅の傍のカフェに入る。
すぐ来るって言ってたからジェミンの飲み物も注文しておこう。
いつも飲んでる異常に濃いコーヒーでいいんだろうか。
飲み物を受け取って席に座って待っていると、窓越しにジェミンと目が合い手を振ったら、ガッと大きく目が開いてずかずかとすごい勢いで店内に入ってくる。
『ジェミ、っわ！』
「かわいい」
『あ、ありがとう』
「かわいい。すっごく似合ってる。色やっぱりそれで正解だね。前髪もちょっと切った？可愛いお顔がよく見えていいね。ふわふわにセットされてるのも可愛い。あいごあいごあいご！！Aってば何でも似合うねえ。あ〜可愛い！」
『ちょ、ちょ、暑い！』
ナナは暑くないけど！
と言って向かいの席ではなくて隣の席に座ってぐいぐいと距離を詰めて、私のほっぺたをもちもちもちもちと揉みしだく。
勢いがすごくて止める隙もなかった。
あとちょっとだけ目が本気過ぎて怖かったから黙っていることにした。
どう考えても至近距離で撮るには向いていないごついカメラを向けて、
可愛いポーズして！とかアイドルみたいに！とか無茶なことを言い出すジェミンに渋々答えると
満足したのかようやく離れて正面の席へと移動してくれた。
「飲み物まで買ってくれたの？」
『うん、すっごい苦いコーヒーでいいんだよね？』
「あいぐ〜！！Aちゃん！！！！いつの間にそんなこと出来るようになったの？お礼に何が欲しいの？言ってごらん、A。ナナが何でも買ってあげる。指輪でもネックレスでも何でもだよ」
『なにその選択肢、何にもいらないよ』
お金で買えるもので欲しいものなんて思い浮かばなかった。
私が欲しいのはずっと昔からただ一つだけだよ。
口を尖らせて睨むような視線で机に身を乗り出すジェミンを、人差し指でおでこを押して牽制する。
大袈裟に奇妙な動きで痛がるフリをするから思わず大きな声で笑ってしまうと、
ジェミンもつられて嬉しそうににっこりと笑った。
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作者名：ロク | 作成日時：2022年5月8日 2時
