青春はサイダーのように (ページ27)

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27.「泣けばいいのに」ページ27

RJ side

『どっちも一位になってほしいから応援するの難しいな』

「うちのほう応援しろよ」

呆れたふりをして小さく息を吐せば、
「どっちでもいいから転びませんように」と一言呟いてからにカメラをグラウンドに向けた。

ジェノは一番手で、ドンヒョクとマクヒョンがアンカーだった。

軽い発砲音で飛び出したジェノはダントツで一位だったけど、次の人が追いついてかなり均衡していた。

アンカーのドンヒョクにバトンが渡るときに手が滑ったのかバトンは掴まれることなく地面に落ち、それに反応するようにAが小さく声を漏らす。

一位でゴールしたマクヒョンがこっちに向かって大きく手を振っている。

ドンヒョクは一瞬悔しそうに顔を歪めたけれど、周りに集まってきた仲間たちに笑顔を向けた。

その中から彼女がドンヒョクに近づくと、何か言葉を発してからその人の頭をくしゃくしゃに撫でた。

その人も怒ったような嬉しそうな心配そうな、
何とも言えない顔をしてドンヒョクの腕を掴んだ。

「……A」

『何回も一緒にいるところを見てるのに、やっぱり、きついね』

膝を抱えて小さくなったAは真っすぐにドンヒョクを見つめて、そのまま視線を動かすことはなかった。

その横顔を見ていると心がぎゅっと掴まれたように急に呼吸さえも出来なくなる。

「、泣くの？」

『もう泣かないよ』

「泣けばいいのに」

『普通は、泣かないで、じゃないの？』

慰めるような優しい言葉を渡してあげたいのに、

そうするって決めたのに、

普段からそんな態度をAにとったことがない俺にとってはそれがひどく難しい。

Aは変わらずにドンヒョクを見つめたままで、どうにかしてこっちを向かせたくてAの小さい頭を撫でる。

びっくりしたようにこっちに向いた瞳にはやっぱりうっすらと涙が浮かんでいて、

でもAは何も言わないから俺もまた何一つ言葉を紡ぎ出すことが出来なかった。

だんだんと下がる頭に触れながら一体いつまでこれをすればいいんだろうと頭をぐるぐると回転させ、

そろそろ心臓の音がAにも聞こえるんじゃないかと思いだした頃に、遠くからジェノの声が聞こえた。

その声はAにも届き、何もなかったかのように顔をあげ

「やっと帰ってきたね」いつも通りの顔をして言った。

俺はそれに頷いてジェノのもとに向かうAの背中を追った。

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