15.「離れるなって言ったのはドンちゃんだったのに」 ページ15
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朝に体育委員の集まりがあるらしいジェノに合わせて、いつもよりも数本早い電車に乗って学校に着いた。
校庭やきっと体育館には朝練をする生徒たちがたくさんいるのに、校舎の中の生徒は少なくてなんだか変な感じ。
普段通らない廊下を選んで辿り着いた第二校舎のほうは
たまにしか使わないから、違う学校に来たような新鮮な気持ちになる。
せっかく早く登校したし、普段行かないところにも行ってみようと思ったのが間違いだった。
家庭科準備室って入ったことないな〜と思って覗いてみるとドンちゃんと彼女がいた。
「嫌なものは見ない」とジェミンの声が頭の中で繰り返し警告を鳴らすのに、二人から目が離せなかった。
窓の外を眺める二人は後ろにいる私には気づいていない。
何を話しているのかドンちゃんの腕を叩いて、いたずらに笑った彼女を優しい顔をして見つめるドンちゃん。
髪を撫でで、ゆっくりと顔が近づく。
彼女の長い睫毛が閉じたところで耐えきれなくなってその場から逃げ出した。
扉にぶつかってガタンと大きな音を立ててしまった気がするけど、そんなの気にしていられなかった。
昔、ドンちゃんは私に
「Aは危なっかしいんだから俺の傍から離れるなよ」って言った。
「Aのものは俺のものってことはAも俺のものでしょ」って笑ってた。
「一人で隠れて泣くな」って私の涙を拭った。
いつ好きになったのかなんてもう覚えていないけど、
私の人生で一番多く呼んだ名前は間違いなくドンちゃんで、
この先ずっと私の隣はドンちゃんしかいないと思っていた。
今までだってそうだったからこれからも一緒に初めてを経験して、一緒に大人になっていくと思っていた。
でも、ドンちゃんの隣は私の居場所じゃない。
一秒でも早く逃げ出したくて、今すぐにでも消えてしまいたい。
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作者名：ロク | 作成日時：2022年5月8日 2時
