11.「あれは一目惚れだった」 ページ11
RJ side
1人きりの帰り道で思い出すのは、Aと出会った日のこと。
俺が最初にAのことを知ったのはドンヒョクと仲良くなる前だった。
一年時の選択美術の時間、誰もいない中庭で絵を描いていた時にAから声をかけられたのが俺たちの最初だった。
『わ、空の色すっごく綺麗だね』
「え、あ、ありがとう」
急に話しかけられて驚く俺を気にせずに質問を続けてきた。
クラスメイトの誰かが可愛いと騒いでいた気がするけど、
俺は話したことがなかったと思う。
教室にいるときは大人しくて話しかけられるたびに困った顔で受け答えをしていたし、お昼休みや放課後は一瞬にしていなくなってしまうし、なんか謎な子という印象だった。
その子が今、俺の絵を見て話しかけているというのが何とも不思議な状況だった。
『これ何色混ぜたらこうなるの？』
「青と緑とちょっとだけ黄色入れたんだ」
『へ〜すごいね、綺麗な色！』
「見たまんまじゃないけど」
『ロンジュンくんにはこんなふうに見えてるんだね』
「…俺の名前知ってたんだ？」
『同じクラスだもん、当たり前でしょ！』
「クラスメイトに興味ないのかと思ってた」
『それは、まあそうだけど、…ロンジュンくんは私の名前分かる？』
「Aさんでしょ」
当たり〜って笑う顔が、なんか花みたいだなって思った。
人に対してそんなことを思ったことは一度もなかったのに、
Aの笑顔を見たら急にそんなことが思い浮かんだんだ。
それからたまに話すようになって、いつの間にか他の三人とも仲良くなって、
ほとんどの時間を五人で過ごすようになって、
ドンヒョクを見るAを見てすぐに気づいた。
こいつはドンヒョクが好きなんだなって。
Aが花ならきっと向日葵で、ドンヒョクが太陽なんだと思う。
それでも、一緒にいるうちに胸の奥で感情が疼き、その感情に行き場がない事は分かっていたけれど、鎮めることは出来なかった。
ああ、思い返してみれば、
あれは一目惚れだったのかもしれない。
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作者名：ロク | 作成日時：2022年5月8日 2時
