35.「本気だよ」 ページ35
RJ side
ご飯を食べて花火をして順番にお風呂に入って、４人でだらだらと話しているうちに気づいたら眠ってしまったみたいだ。
目が覚めて時計を見るともうすぐ朝になる時間で、窓の外は薄っすらと明るくなっていた。
なぜか部屋の隅でくっついているジェノとジェミンはまだぐっすりと眠っているのに、隣にいたはずのAがいない。
トイレでも行ったんだろうなと思って帰りを待ったけど、なかなか戻ってくる気配がなく、
どうしようもなく心配になって物音を立てないように起き上がる。
「何してんの」
『ロンジュンもう起きたの？』
「うん、Aは眠れなかった？」
『なんか目冴えちゃって』
「珍しいな」
縁側に座り込んで朝の光に照らされたAを見て一瞬息が止まりそうになった。
この目に録画機能がついていたら、絶対に消えないように保存して何回も何百回も再生するんだろう。
それくらい素直に綺麗だと思った。
こんなこと言っても「変なもの食べた？」とか「寝ぼけてる？」とか言ってくるだろうから伝えられないんだけど。
ちゃんと伝えてAの軽口にも
「本気だよ」と言えれば何かが変わるんだろうか。
「散歩でも行く？」
俺の服の裾を掴んでおぼつかない足取りでついてくるAはいつもよりもなんだか幼く感じる。
太陽の光が波で反射するから
普段暮らしている街の朝よりも明るいように思う。
こんな時間に起きることはほとんどないから知らないけど。
目を離したら一瞬でこのまま消えてしまうような気がして、Aの手を掴む。
小さくて柔らかい手は真夏なのにひんやりと冷たかった。
『どこまで行くの？』
「この辺でいいか」
『朝の海って気持ちいいね』
「去年は爆睡して起きたの昼だったもんね」
『ロンちゃんが起こしてくれなかったんだもん』
不満そうに口を尖らせてじとりとした視線を向けるA。
「子供じゃないんだから自分で起きるべきだろ」
と負けじと目をあわせて対抗する。
何秒間か目を合わせていると恋に落ちるとどこかで聞いたことがある。
あれは何秒だったっけ。６秒か７秒か。
１、２、とゆっくりカウントしてみたけれど、
時間が経つ前にAの視線は海へと動いてしまった。
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作者名：ロク | 作成日時：2022年5月8日 2時
