19.「これからは優しくするって決めた」 ページ19
RJ side
『でも、今更言ったって遅いよ』
「ちゃんと伝えないからいつまでもそうやってウジウジ一人で悩んでるんじゃないの？」
『そんなこと、な、あるかも』
今言った言葉は自分の胸にも刺さる。
俺だって感情のままに早くAに言ってしまえば、結果はどうであれ悩みの一つは消えるんだろう。
でももうAが俺の前でふざけたり、軽口を叩くことは無くなるんだろう。
「振られたらパフェ奢ってやるよ」
『振られる前提だし…』
「Aがもうパフェ見たくないって言うまで毎日でも付き合ってあげるから頑張れよ」
『ロンジュンが優しい』
Aが「明日雨か雪でも降る？」と首を傾げて笑う。
おでこに軽くデコピンをすると大袈裟に暴力ふるわれた！とその場に倒れ込んだ。
初めて話した時はこんなにふざけたやつだと思わなかったし、もっと大人しい子だと思った。
実際教室で知ってる人が傍にいないときの様子を思い出すと、あまり知らない人に声をかけられたAは困った顔をして俺たちに助けを求めることがある。
その顔を見るとドンヒョクがいっつもAの傍にいた理由がよく分かった。
だからAが今ではこうやって俺の前で自由にしてくれるのが嬉しく感じる。
「これからは恥ずかしくても優しくするって決めたから」
『ロンジュンが優しいと調子狂っちゃうよ』
「慣れて」
『わ、分かった』
「うん」
『でもどうして急に？』
「作戦変更」
『作戦？』
何の？と聞いてくるAに答えないで、スマホに視線を戻した。
Aと一緒にいると思い通りに行かないことが多い。
本当は優しくしたいのに気づいたら憎まれ口ばかりで、
こんなんじゃ、あの鈍感は一生気付かないと分かっているのに、どうもうまく出来ない。
もどかしくてイライラする。
こんなはずじゃなかったのに。
思った通りに出来なくて、
傍にいるだけで息が詰まってしまうような想いを恋だと言うのなら、
結局俺ばっかりが恋をしてるんだろう。
でも、それでも、一緒にいたいと思うんだから、
恋は病だと言った先人の言葉は正しいんだと思う。
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作者名：ロク | 作成日時：2022年5月8日 2時
