ビジョンの時間(6) ページ6
「いいけど、俺の作戦実行できんの？」
そう言うと、私のもとから離れるカルマは寺坂くんのシャツのボタンを引きちぎる。
「俺の作戦、死ぬかもよ？」
*
「さぁて、トドメにかかろうイトナ」
シロは全ての触手が真っ赤に膨れ上がった殺せんせーを前に言い放つ。
と、寺坂くんが崖の上から滑り落ちてくる。
「よくも俺を騙したな！！」
シロの挑発を無視し、前が開いているシャツを完全に脱ぎ寺坂くんはシャツを前に構える。
「おいイトナ！テメェ俺とタイマンはれや！」
「やめなさい！寺坂くん！君が勝てる相手じゃない！」
「すっこんでろタコ！」
カルマの与えた作戦は一般人が、中学生が受けるにはあまりにも厳しい作戦だった。
「カルマくん！」
「いいんだよ。死にはしない。
シロの目的は生徒を殺すことじゃない。原さんも攻撃の的になることはないだろう。
だから言っといたよ。
気絶する程度の触手は食らうけど、逆に言えばスピードも威力もその程度…死ぬ気で食らいつけって」
寺坂くんに堀部くんの触手が入る。
が、それを耐えると、堀部くんのくしゃみは止まらなくなった。
寺坂くんてば、昨日と同じシャツを着ていたみたいで、そんなシャツには変なスプレーの効力がたっぷり効いている。
堀部くんが隙を見せた瞬間に、先生はすみれちゃんを助け出し、皆は崖を下りる。
「おい！村松！吉田！デケえやつ頼む！」
「おいおいまじかよ…」
なんて言いながら、村松くんも吉田くんも心なしかワクワクしている。
全員で浅瀬に入り、堀部くんに水をかける。
先生と弱点が一緒なんだもんね。
私はまだ回復しない体で上から皆を見下ろしていた。
『たくましくなったなぁ。私と全然違うや』
カルマは浅瀬の岩の上に座り込み、話を続ける。
「で、どうすんの？
賞金持って行かれるのも嫌だし、皆あんたのせいで死にかけてるし。
続けるなら、全力で水遊びさせてもらうけど？」
「…してやられたな…帰るよイトナ」
そう言って2人は退散して行った。
すみれちゃんに失礼なこと言った寺坂くんも、
高いところからずっと見ていたカルマも、
皆ずぶ濡れになって笑っていた。
『あははっ、ほんと、このクラスで良かったや！』
「雪目さん、貴方を危険な目に晒してしまいすみませんでした。
すごく助かったのですが、貴方にはもっと自分を大切にしてほしい」
皆の笑い声を聞きながら、私は殺せんせーの謝罪をきき、うん、とだけ返したのだった。
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作者名：れれれ | 作成日時：2023年12月9日 19時
