堀部糸成の時間(4) ページ47
「雪目さん…君は…」
そう言って唖然とする私の肩に手をのせる殺せんせー。
「雪目、00チルドレンって…？」
「昔ニュースで聞いたことがあるような…」
他の子たちも話し始める。
『ごめん…それ以上詮索するのはやめて。それ以上は…私の尊厳にも関わるから』
そう言って、ゆっくり地面に膝をつく私。シロは一体どこまでを知っているんだろう。
それとも、彼の言う通りもう手を引いたほうがいいのか？
『っ…それよりも今は堀部くんでしょ？今は命が最優先だよ』
そう言って話を戻すと、カルマは私を立ち上がらせて、軽く抱きしめて頭を撫でてから何も言わずに手を繋いだ。
この距離感が本当に心地良い。
私を気にしながらも、殺せんせーは堀部くんに向き直り話しだした。
「イトナくんに力や勝利に執着がある限り、触手細胞は癒着して離れません。
切り離すには、こうなった原因をもっと知らなければいけません」
そう言うも、自分の話なんか軽々しないであろう彼に皆が頭を抱えていた。すると、優月ちゃん、
「そのことなんだけど、携帯ショップばかりを狙ったのが気になって律に調べてもらってたの。
そしたら、堀部イトナってここの社長の子供だった」
優月ちゃんのスマホには、"堀部電子製作所"のホームページが。
その会社は、一昨年倒産した、世界的にスマホ部品の提供をしている町工場だった。
そして両親は雲隠れしたんだそうだ。
「ケッ、つまんねぇ。それでグレただけって話か。皆悩みはあんだろ。思い軽いはあんだろうが…。なぁ？雪目」
『…うん…』
何ともないって顔しながら寺坂くんは堀部くんに近付く。
私はその言葉に何か救われた気がした。
「俺らんとこでコイツの面倒見させろや。それで死んだらそこまでってことだろ」
そう言って、寺坂くん達に任せることになった。
*
村松くんのラーメン屋、吉田くんのバイク屋、狭間ちゃんの復讐小説…と彼らなりに試行錯誤していた。
私達はというと、気になって吉田くんのバイク屋に様子を見に来ていた。
「A、帰んなくてほんとに大丈夫？」
『うん…なんか、寺坂くんのおかげで少し助かったかなって」
「ふぅん…」
あいも変わらず、深く聞くことはなく手だけはずっと握ってくれるカルマ。
安堵を覚えていると、彼らに異変が起こる。
どうやら堀部くんのスイッチが入ったみたいだ。
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作者名：れれれ | 作成日時：2023年12月9日 19時
