渚の時間(2) ページ33
「烏間先生！もう撃ってください！あんなの、渚死んじゃうよ！」
カエデちゃんの悲痛な叫びが聞こえる。
本当にその通りで、カルマもなんとかしてやろうと思っているのか何かを考えている。が、
「待て。手出しすんじゃねぇ。
カルマ、お前は練習サボってるから知らねえと思うけど、渚…何かまだ隠し玉持ってるみたいだぜ」
と、寺坂くんがハッキリそう告げる。
*
渚は夏休み中、ロヴロに"必ず殺すための必殺技"を授けられていた。
その必殺技には発動条件があるという。
1つ、武器を2本持っていること。
2つ、敵が手練れであること。
3つ、敵が殺される恐怖を知っていること。
その3つの条件は、今まさしく鷹岡に当てはまっていた。
渚もそれを確信し、弱っている体とは対照に目は強気にギラついていた。
またも渚はゆっくり鷹岡に近付く。攻撃に備えて構える鷹岡。
_タイミングは、ナイフの間合いのわずか外。
接近するほど、相手の意識はナイフに集まる。
その意識ごと、ナイフを置くように宙に捨て_
*
緊張の走る静かな空間。
外のはずなのに、風1つ音がしない。
そんな緊張感の中、潮田くんの手を打ち付ける音が響いた。
見ていた私達でも、一瞬にして心臓を掴まれた感覚に陥る。
それを直で受けた鷹岡は途端に後ろに倒れ込む。
そして、その隙を逃さず、腰にくくられていたスタンガンを素早く抜き、鷹岡の脇に電流を流す。
両膝を着いた鷹岡に、全員が息を呑んだ。
『今…何が…』
言葉を発するのでやっとだった。
「トドメを刺せ、渚。首あたりに流しゃ、気絶する」
寺坂くんのその言葉に潮田くんは再度スタンガンを持ち直し、鷹岡の首に突きつける。
「やめろ…その顔は…その顔で終わらせるのだけはやめてくれ…」
「鷹岡先生、ありがとうございました」
またしても笑顔でお礼を言う潮田くん。
電流を流すと、いとも簡単に鷹岡は泡を吹いて倒れる。
「よっしゃぁ！ボス撃破！」
菅谷くんの声に全員が喜ぶ。
寺坂くんも苦しいはずなのに、嬉しそうな顔をする。
今日、潮田くんを一番信用していたのはきっと彼だろう。
カルマと磯貝くんを始めとし、ヘリポートに一同が集まる。
そこでは潮田くんの褒め合いやら心配やらでいっぱいだ。
そして、私にも__
「Aあの時1人にして、怖い思いさせてごめん」
なんてメグちゃんや桃花ちゃんが謝ってきた。
謝らないで、と顔を上げさせ再び渚を見る。
『主人公は潮田くんだよ』
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作者名：れれれ | 作成日時：2023年12月9日 19時
