21*渚の時間 ページ32
狂気に満ちた笑みを浮かべる鷹岡は、治療薬を宙に投げ、爆発した。
全員がその光景に唖然し、絶望した。
そんな私達を嘲笑う鷹岡に心底虫唾が走る。
高らかに響く笑い声の中、潮田くんは寺坂くんを見つめた後に目の前にあったナイフを両手で握った。
「…殺してやる」
「そうだ。そうでなくっちゃなぁ」
「殺してやる…よくも皆を…！！」
「殺してみなさぁい！渚くん！！」
高らかな笑いを続ける鷹岡と、冷静さを失った潮田くん。
すると寺坂くんが自前の武器を潮田くんの背中に投げ付ける。
どうも、尋常じゃない様子だ。
「調子こいてんじゃねえぞ渚ぁ！
テメエ、薬が爆破されたとき俺のこと哀れむような目で見てただろ。ウイルスなんて寝てれば治せんだよ！」
「寺坂…お前…！！」
「そんなクズでも息の根止めたら殺人罪だ！テメエはキレるに任せて100億のチャンスを手放すのか！」
「寺坂くんの言う通りです。そんな男は殺す価値もない」
『潮田くん。そうだよ。殺りたい気持ちを噛み殺して、価値のないやつはビビらせる程度で終わり。私みたいにそうしよ』
先程のシーンを私は頭に過ぎらせながら、言葉で援護する。
鷹岡はそんな私達に逆上するも、私達の言い分は変わらない。
ついには、ウイルスに侵された寺坂くんは倒れ、潮田くんに向かって言った。
「やれ…渚。死なねえ程度にぶっ殺せ」
潮田くんはその言葉に、投げられたスタンガンを拾い、腰にくくる。そして片手にはナイフを持って立ち上がった。
「おぉおぉ。やる気だねぇ。
ちなみにぃ？ここにいくつか薬の予備がある。
下にいる者が邪魔しようもんならこれも爆破する。
烏間ぁ！邪魔すんなよぉ！」
そう告げられ、始まった。まさに文字通りのデスマッチ。
まず潮田くんに蹴りが入り、頭突きが入り、拳のストレートが入る。
_体格・技術・経験。
全てにおいて圧倒的に潮田くんは劣っていた。
攻撃が何度も入り、ものの数分で潮田くんはボロボロだ。
「おいおい、へばるなよ。今までのは序の口だぞ」
鷹岡の呑気な声がする。
あぁ、今すぐにでも加勢してやりたい。
カルマを横目で見ると、私と同じ気持ちのようだった。
『っ！あいつ…っ！』
鷹岡を見ると、ついにはナイフを持っていた。
そのまま器用にナイフで遊びながら潮田くんに近付く。
「手足切り落として標本にしてやる。ずっとそばにおいて愛でてやるよ」
ナイフの刃先を潮田くんに向けた。
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作者名：れれれ | 作成日時：2023年12月9日 19時
