伏魔の時間(2) ページ18
「状況判断もできねぇのかよビッチ先生！」
「あんだけの警備の中どうやって…」
「だから普通によ…」
そう言って、酔ったふりして歩き出し、一番手前の警備にぶつかるビッチ先生。
その後、彼らの手を引いてピアニストに成り代わりその細い指で艶やかにピアノを弾いていく。
「幻想即興曲ですね。腕前もさることながら、色気の使い方をよく知っている。」
普段のビッチ先生からは微塵も感じられなかったが、やっぱりプロだ。本当にすごい。
音色、そしてビッチ先生の姿に全員が見惚れ、そして尊敬をしていた。
そして、ビッチ先生のハンドサインを見逃さず、私達はロビーを通り過ぎたのだった。
*
3F廊下にて__
「ここからは、客のフリができる。
君等ぐらいの歳から悪い遊びに手を染めたボンボン達が多くいるんだ」
烏間先生がそう言うと、皆真っ先に私を見る。
『こっち見んな！共通認識すな！』
「だから君たちもそんな輩になった…雪目さんになったつもりで…世の中を舐めてる感じで歩いてみましょう｣
『せ、先生まで…』
大爆笑するカルマを殴ったのは内緒の話。
皆、思い思いに輩になりきって歩く。私も、ショートパンツのポケットからタバコを取り、吸い出す。
「あれ、控えてるんじゃないの？」
『3日に1回は吸いたくなるよ。でも、ブラメンみたいな強いのじゃなくて、最近はウィンストンの3ミリ吸ってる』
「あれが悪い遊びに手を付けた中学生か…」
「なんともねー顔してやがる」
『菅谷くん？木村くん？聞こえてるからね？』
「皆さん、相手は君たちの顔を知らない。私達も敵の顔を知らない。
相手も同じく客のフリして襲ってくるかもしれない。十分に警戒して歩きましょう」
*
しばらく歩くと特に何も起こることなく中広間まで進んだ。
『あー、やっぱ喫煙者やめられないかも』
数分前に捨てたタバコに私は未練を抱いていた。
『もうちょっと吸えたのに』
「それはどうかと思うが…」
隣りにいた千葉くんは呆れたように呟いた。
そんな会話を最後尾でしていると、寺坂くんと吉田くんが前からくるお客さんに目もくれず走り出す。
「寺坂くん！そいつ危ない！」
優月ちゃんが叫ぶと同時に、烏間先生が2人を突き飛ばし、前方の客は何かを噴射する。
「なぜ分かった？殺気を消してすれ違い様にやるのが俺のオハコだったんだがなぁ。おかっぱちゃん」
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作者名：れれれ | 作成日時：2023年12月9日 19時
