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 脳内の監督生には何をしても問題はない。何をされているのか分からないといった表情の彼女の頬を千切れるほど捻ったり、少し青ざめた色の柔らかい腕を噛みきったり、骨が軋むくらい抱き締めたり。その質感や温度を妄想できるくらいには、僕の想像力は豊かだった。

 勘違いされたくないので何度でも言うが、僕は現実の彼女をなぶりたいわけではない。僕の欲望というものは矛盾していて、血が出たり暴れたり叫んだり、泣いたりされるのは不愉快で不本意なものだからだ。ならば人形でも買ってすればいいじゃないかと言われそうだが、それでは肉に食い込む歯の感覚やどうしても人と違うその温度が具体的に提示されてしまって、僕の想像力が発揮されなくなってしまってよくない。

 今日も今日とて僕は食堂で遠くから彼女を眺めながら脳内の監督生をいたぶった。閉鎖された空間へのストレスを全て妄想で解消できるのだから、別に非難されるものではないはず。むしろ人を殴っているウツボや怒鳴り散らす赤いのより全くもってマシ。

 僕は気づかなかった。彼女を見ながら、僕が無意識に呟いていたことに。それをあろうことか、彼女のマブが聞いていたことに。





『...捻り潰したいなぁ...』

 どこか恍惚とした物騒な声が聞こえて、食事を取ってきていたオレはつい足を止めそうになった。人気のAランチをゲットできて上がってたテンションが台無し。自分で言うのもなんだけど勘のいいオレは、それは十中八九監督生に向けられたものだと察してしまったからだ。

 錆びたブリキのように首を動かして声の主を確認すれば、臙脂の腕章のついた生徒、つまりスカラビア寮生だった。ソイツはしつこい生クリームみたいに甘くてベタついた視線で監督生を眺めていた。思わずゾッとしてしまうような、粘着質で生理的嫌悪感を感じさせる類いの眼差しだった。

 女である監督生はこの学園のイレギュラー。つまりそれだけ排除しようと思う輩が多いということ。暴力や影口、...そして、性的なもの。それらはオレ達で防いできた。コイツはどの嫌がらせをしようとしているのだろう。恐らくは性的なもの。捻り潰したいと言っていたから、暴力も振るいそうだ。コイツの眼差しは本気だった。

 これは報告しなければと、オレはお盆を持つ手の力を強めた。

 監督生を嫌う奴らはいても、それと同じくらい監督生を守ろうとする奴らがいるんだから。


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シーレーン - ヘンゼル先輩…!!なんか涙出てきました。もう引き込まれちゃいますね。 (10月28日 19時) (レス) @page7 id: 2c0af216aa (このIDを非表示/違反報告)
かれーのるー - なんかバグりましたすみませんw (2022年1月25日 0時) (レス) id: ff37b677a5 (このIDを非表示/違反報告)
かれーのるー - 大スランプ…年に数回ありますよね…ネタは浮かぶんですけど、それを書き起こす気力がなくなる、というか。文章が何一つ浮かんでこないんですよ…陽炎さんはスランプでも頑張っている陽炎さんの小説、本当に大好きです。体調に気をつけて一緒に頑張りましょう! (2022年1月25日 0時) (レス) @page5 id: ff37b677a5 (このIDを非表示/違反報告)
琉流 - 『配られたカードで勝負するしかないのさ』ってスヌーピーですよね。バットエンド大好き民ですから陽炎さんの作品は有難いです。【生徒会長は胃痛持ち】で初めて知りましたが、これからもずっと応援しています。 (2022年1月23日 3時) (レス) id: 45a1f0a151 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:陽炎 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Kagerouhp/  
作成日時:2022年1月22日 17時

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