215.王と歴史の裏側 ページ10
「だが彼らは嘆きの島で厄災...ブロットの研究をし続けていた。非政府組織''S.T.Y.X.''として。」
集められている生徒達はあまりのスケールの大きさに二の句が継げないでいた。
リリアがそう話を締めくくったのを見て、トレインは憂鬱そうにため息を吐く。
「イデア・シュラウド...彼がシュラウド家の子息であることは我々も把握していたが...シュラウド家と''S.T.Y.X.''の密接な関わりについては初耳だ。私はあらゆる魔法史の文献に目を通した自負がある。しかし、そんな記述を見た記憶はない。」
「それは人間側に残っている文献だけの話じゃろ？」
科学技術の発達によって、人間というものは自然から離れていった。
自分が矮小な存在であることも忘れ、己こそが世界の支配者だと傲る人間達に憤り見限った、自然と密接するいわゆる''魔の存在''は多数いる。
それは妖精だったり、精霊だったり。
もはや歴史上の話ではあるが、国交断絶や下手すれば種族間での戦争もあった。
「国や種族が違えば、伝える内容も違う。そして、書物に残らぬ真実も多くある。何者かの思惑によって捻れ歪められることも少なくない。それが歴史というものよ。」
間違ったことが書かれている訳ではなかったとしても、その人の立場、感情、見たことによって変わってくる。
例えば作成者が愛する人を敵に殺されたなら？
敵を改悪し、味方の悪い部分を隠蔽しようとするだろう。
味方が悍ましい迫害を繰り返していても、作成者がその現場を偶然見ていなかったとしたら？
知らぬが花。本人に悪気はなくても、味方を被害者だとばかりに書き立てるだろう。
そうでなくとも。
『文献が作成されるのは、戦争などが起こり記し残すことが必要な時だ。そもそもそういう時代は愚王...気に入らないことがあると何をしでかすか分からない王であることがほとんどだから、その機嫌を損ねないよう、自分達に都合の良いように書かれていることが多い。』
帝王学に賢君の政治を学ぶとともに、暴君の政治まで学んだ彼の''王について''の語りは嫌に現実味を帯びていて、安易に口を挟めるものではなかった。
一般人が知り得ないような、王族のみで隠されてきた歴史の裏側を、彼は沢山知っているのだろう。
『...諍いは、勝った方が正義だ。』
敗者の気持ちは無いものとされ、勝者に都合の良いように書き連ねた薄っぺらい文献が、「こんなことが起こった」と確認すること以外の一体どんな役に立つだろうか。
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あお - 今日この作品を見つけて、一気に読みました！！とても面白かったです☺男主が魅力的でとても楽しくお話を読ませていただきました！お体に気をつけて更新頑張ってください！！ (3月30日 23時) (
レス) id: 63ae223e49 (このIDを非表示/違反報告)
葱(プロフ) - 遅ればせながらお誕生日おめでとうございます。更新をずっとお待ちしておりました！これからも無理のない範囲で更新頑張ってください！ (3月29日 1時) (レス) id: ec1bbf9e0f (このIDを非表示/違反報告)
弐番目の子(プロフ) - 遅れました！お誕生日おめでとうございます！㊗️成人!これからも応援しています！ (3月24日 15時) (レス) @page15 id: ba785ca851 (このIDを非表示/違反報告)
白 - お誕生日、おめでとうございます！！！！久々の更新でとても嬉しいです！これからも応援してます！！！！ (3月24日 9時) (レス) id: 009b20195a (このIDを非表示/違反報告)
ゆきっき(プロフ) - 少し遅れましたが、お誕生日おめでとうございます！更新が見られて嬉しいです！ (3月24日 0時) (レス) @page15 id: e77387d96a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：陽炎 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Kagerouhp/
作成日時：2022年8月31日 0時
