207.美しき女王と王 ページ2
「っまた、悪役...!」
マネージャーからの知らせに、ヴィルは歯軋りした。
ナイトレイブンカレッジに入学してすぐの頃、在学中のドラマ出演はこれで最後にしようと受けたオーディションの結果は、薄々分かってはいたもののまた悪役で。
どうしても主役になれない積もりに積もった悔しさに涙さえ浮かべながら、ヴィルは人気の無い廊下の突き当たりで顔をこれでもかと歪ませる。
またも主役をかっさらったネージュへの嫉妬が、努力が報われなかった虚しさが、醜い顔になって現れる。
飾られている大胆な装飾の古い鏡を覗きこむ。
映った自分がとても魅力的に見えて、吸い寄せられるように手を添えようとした。
薄く魔力を感じる鏡で、見ていると、何だか凄く、落ちつい、て...
『__防御魔法!』
「っ!?」
思考の停止していた頭のスイッチが入る。
脳が命令するより先に、体がその鏡から離れる。
立っていた所を見ると、魔力をふんだんに含んだ分厚い半透明の防御壁が展開されていた。
『...君、この鏡の前で強い負の感情を抱いたか。』
「ええ、うん、そうよ。...アンタは、」
紺のマントに長い三編みの水色の髪。
自分の学年で起きたイレギュラー。
100年ぶりの生徒会長。
鏡から感じる、自分にはまだ解析できない禍々しいそれを、彼は抑えて鏡に押し戻している。
「ありがとう。本当に...ねえ、アタシどうなってたの?」
『...強い負の感情を持ったものを映すと引き込んでパワーにする魔法道具だ。君は明らかに魅了されていた。触れていたら確実に助けられなかったな。』
何故そんなものが学校にあるのかと怒ると同時にゾッとした。
自分は感情に呑まれ、呪われかけたのだ。
『感情というものに支配されると、人は不安定になり、つけ込まれやすくなる。それが呪いの魔法道具だろうと、人だろうと。...自分自身だろうと。』
「...気をつけるわ。ちょっと...いえ、大分悔しいことがあったの。」
『...そうか。』
アルタイルは、何でも知りたがるファンやミーハーな生徒達と違って無遠慮に根掘り葉掘り聞いてくることはなかった。
だから密かにヴィルは、人として学友として、アルタイルを尊敬していた。
魔法力、頭脳、人の心を汲んで接する技術。
ポムフィオーレ寮生以外なら1番気にかけてもいた。
「...結局、助けられてるのはアタシだけってことね。」
そんならしくない感傷を頬を叩いて出ていかせて、ヴィルはスキンケアを再開した。
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あお - 今日この作品を見つけて、一気に読みました!!とても面白かったです☺男主が魅力的でとても楽しくお話を読ませていただきました!お体に気をつけて更新頑張ってください!! (3月30日 23時) (レス) id: 63ae223e49 (このIDを非表示/違反報告)
葱(プロフ) - 遅ればせながらお誕生日おめでとうございます。更新をずっとお待ちしておりました!これからも無理のない範囲で更新頑張ってください! (3月29日 1時) (レス) id: ec1bbf9e0f (このIDを非表示/違反報告)
弐番目の子(プロフ) - 遅れました!お誕生日おめでとうございます!㊗️成人!これからも応援しています! (3月24日 15時) (レス) @page15 id: ba785ca851 (このIDを非表示/違反報告)
白 - お誕生日、おめでとうございます!!!!久々の更新でとても嬉しいです!これからも応援してます!!!! (3月24日 9時) (レス) id: 009b20195a (このIDを非表示/違反報告)
ゆきっき(プロフ) - 少し遅れましたが、お誕生日おめでとうございます!更新が見られて嬉しいです! (3月24日 0時) (レス) @page15 id: e77387d96a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:陽炎 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Kagerouhp/
作成日時:2022年8月31日 0時