178.忠誠と平等 ページ9
唾を撒き散らす勢いでオラフィスはそう言った。
彼の言葉はその後の沈黙も相まって痛いほど響く。
「...何でそんなことも分からないの？理解力低下してるんじゃない？」
アルタイルは彼の声の響きに、人目を気にして僅かに気まずそうにしたが、オラフィスにとっては人の目などどうだってよかった。
今はただ、この大馬鹿ニブチン希死念慮野郎をどうにかしなければならない。
オラフィスには誰よりも死という現象に立ち会ってきた自信がある。
自分が命を奪っているのだから当然だ。
彼にとって''死''とは、幼いときから関わってきた故か当たり前に思えるものであり、人の死も虫や家畜が死んだものと同じように捉えていた。
そもそも人も他の生き物も、ただの''生あるもの''。
生あるものには等しく死が訪れるのだから、人を特別視するのは可笑しい。
人が自らに害を及ぼす虫や動物をいとも容易く殺すように、人に害を及ぼす、人が殺すことを戸惑う''人間''を依頼を受けて殺しているだけだ、と。
つまるところオラフィスは誰よりも平等であり、それが人からしては異端で異常と言えた。
人は他の生き物と違って意思があるのだから特別だ、という選民思想溢れる人間の中で生きるのは難しい。
だからこそ、それを本当の意味で理解できない彼はこの血と恨みと嘆きに溢れた裏社会で生きるしかないと思っていた。
...彼に会うまでは。
依頼を受けて近づいたアルタイルという人間は、ある意味自らとかけ離れていた。
自分が特別であるのを当たり前のように享受する、オラフィスには理解できない思想を持つ男。
人からは超越した能力とその特別に苦しみ、後悔を抱えて責任を果たそうともがく人間。
そして何より、生まれて初めて出会った、希死念慮を持つ人間！
みっともなく生にしがみつく人間にしか会ったことがなかったオラフィスには、それは未知との遭遇であり、好奇心で胸が高鳴る思いがした。
もっとこの人のことが知りたい。
幸運にも3年の猶予のある依頼だから、ゆっくり観察して喋って理解して、それから殺そう。
面白い人だ。
最初はケージの中の実験用モルモットを観察する気持ちでいたはずなのに、情を抱いたのはいつだったか。
両親にも、弟にも抱いたことのなかった''情''。
彼は「生きていてほしい」と願ってしまった。
生まれて初めて情を抱いた相手は、自分が殺さなければならない人で。
ああ、神様は意地悪だ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2241人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ツイステ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
猫やぎのサブ(プロフ) - コメント失礼します！陽炎さんの作品とっても大好きです！アルタイル様のイメソン‥「1000年生きてる」如何でしょう、、 (1月7日 11時) (
レス) id: 497823dae0 (このIDを非表示/違反報告)
シキ(プロフ) - もうコメントするの遅すぎたと思いますが…｢The Beast｣いいと思います！！ (2023年1月16日 22時) (レス) @page29 id: f878b3efd0 (このIDを非表示/違反報告)
あなたの心にAmazing - アルタイル様は...私的にピッタリだなぁって思ったのが、まふまふさんの「空腹」です。胃というところで共通点があるのと、歌詞にも「愛を知らない」、「化け物」というワードが出てきたり...他にもアルタイル様と重なる歌詞がたくさんです。いい曲ですよ！ (2022年12月24日 22時) (レス) @page29 id: 4aeec97b35 (このIDを非表示/違反報告)
スミィス - アルタイル様は「オレンジ」って曲、どうでしょうか…大好きです！！ (2022年11月9日 18時) (レス) id: f06ecf8049 (このIDを非表示/違反報告)
莉緒(プロフ) - 初コメ失礼します！！アルタイル様ガチ勢です！！アルタイル君世界で一番愛してる自信あります！！アルタイル様のイメソンで、まふまふ様の「廃墟の国のアリス」とかはどうでしょう､､､？ (2022年9月18日 19時) (レス) @page29 id: f2671d43ca (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：陽炎 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Kagerouhp/
作成日時：2022年2月10日 22時
