推しが親友連れて家に来たんだけど。 (ページ7)

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3-2　恥ずかしさと、愛。ページ7

「お兄さんの前ではこんなに可愛らしいのですね。」

「ホントだよ！僕がいる時にも見せて欲しいくらいだ！」

　照れて顔を隠す私を、ちょっとからかうみたいに言葉をくれる推しとその親友。その言葉が嬉しくてさらにうずくまってしまう。兄はそんな私の姿を見て、笑っていた。

「こんなAだが、仲良くしてやってくれ。」

　兄は推したちにそう頭を下げて、兄は自分の持つ家庭へと帰っていった。いつもならまだいるのだが、きっと推したちを見て安心したのだろう。ギリギリまで見送って、ふと小さな時の事を思い出す。少しだけ身震いをして、推したちの元へと戻る。しばらく顔を見て話す事はできなかった。

　夕飯を食べ終えて少し時間を置いたころ、私の推しは家族について聞き始めた。

「Aさんのお兄さんとAさんを見ていると、なんだか小さい頃の話が聞きたくなってしまったよ。」

「会って間もないので、無理に話す必要はありませんが…ふむ。その話、僕も気になります。」

「私の幼少期なんて、大したことはありません。あるとしても、幼少期に音楽教室に通っていたことくらいしかパッとするものがないのですから。」

「家族はどんな感じだったの？」

「……私にとっては毒という事は言えましたね。兄は除きますが。母は気まぐれで癇癪持ちで。父は叱る度胸のない男でした。まあ、もう両親とは会う事はないでしょうけど。」

　両親の事を思い出しながらお皿に付いた汚れを洗う。もう母親の顔は思い出そうにも思い出せない。こんな私は親不孝者だと私は世間から後ろ指刺されるだろうが、実際の所どうでもいいのだ。洗った皿を推しに渡そうとした時、バリン！と大きな音がした。ビックリして床を見ると、私が渡そうとしたお皿が割れていた。

「大丈夫？ケガはないかい？」

　そういって私の手を確認する推し。それに少しドキッとした。割れた皿を処理しようとすれば推しに止められ、どうしたらいいものかとあたふたするのもいけないので、私はシャワーを浴びて頭を冷やすことにした。
　一人シャワーを浴びる。そこには無限の不安が広がって蓄積する。狭くて圧迫されそうな感覚になった。お風呂にお湯をためて入れば、一気にマイナスな感情が押し寄せてきて、息ができなくなる。なんとか深呼吸をして湯船から出れば、のぼせたのか私はその場に倒れこんでしまう。ああ、これは不味い奴だと他人事のように感じてしまう私は本当に危機感が欠如してるのではないかと思う。