Ep.3-1 兄が家に来るってマ? ページ6
次の日、私はいつもどうり会社に出勤した。まあいつもと違う所は家から出る時に推しがいたというわけだ。朝から推しを見れた私は、テンション爆上がりで坂を上がる。会社につけば書類整備、外回り、情報整理等々。いつもやっている事だが、いつもより作業効率が上がっていた。嫌な上司に仕事を押し付けられてもイヤな顔一つ出さず処理することができた。いつもよりルンルンな私を見た同期の一人が私に話しかけてきた。
「Aさん、いつにもなくルンルンじゃないですか。そんなにこの間届いたグッズが良かったんですか?」
「いや、そういうわけではないんだ。帰ってからの楽しみが増えたんだよ。」
「へぇ、彼氏と同棲でも始めたんですかぁ?でもAさんって彼氏いましたっけ。いたとしてもオタク趣味バレて引かれそう。」
「失礼な。」
皮肉を込めて言ってくる同期には少々腹が立ったが、推しの顔を思い浮かべるだけでその感情は飛んでいった。
お昼時になれば皆社員食堂へと行くのだが、私は違う。いつも仕事に追われている。今日も昼休みを削って仕事を率先している。そうでもしないと私はノルマを達成できない。そうなると毎度お昼を買ってきてくれるのは、会社の先輩だ。
「テンションが高いからって仕事に集中するのはいいが、身を亡ぼすなよ。」
そう言って毎度差し入れと称したお昼ご飯とエナジードリンクを私の机の上に置いてくれる。私の会社の中での唯一の癒しだ。
「先輩ありがとうございます。」
「いやいや、これくらい会社第一に考えてくれている君の頑張りに比べれば、小さなものだよ。」
「先輩……!」
そうして私は休み休みにご飯をはさみながら、仕事をしていく。先輩の配慮に毎度ありがたさしか感じないが、こうして私の一日は過ぎていく。
仕事を終え、家につけば、そこには兄の靴の姿があった。久しぶりの兄との再会だ。私は急いでリビングへと向かった。
「あにぃ!!」
「うお、今日も一日お疲れさん。夕飯作ってあるから食べなよ?」
「はーい!」
私はこうして定期的に家へ遊びに来る兄がいるから、幼稚な自分に戻れる。私はいつまでも幼稚な人間で、それを今更変える事なんてできなかった。そこに唐突に「かわいい」という言葉が横から聞こえてきた。そこにはつい最近住み始めた推しとその親友がいた。この私の姿を見られたことに恥ずかしくて顔を隠した。
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作者名:シズク | 作成日時:2023年9月24日 23時