Ep.2 猫がいなければネズミが好き放題 ページ5
「やあ!半年ぶりだね!」
「あの時は命を助けていただき、ありがとうございます。」
ニコニコした顔で感謝を述べる推しとその親友。まずその推しが可愛くて顔を抑える。心臓がうるさい。どうにかなんないものだろうか。動揺していれば、推しは仮面を外して口を動かした。
「ねえAさん。私たちはここに住めるのならなんだってしたいし、それにAさんに恩返しがしたい。」
「私も同意見です。私たちをAさんの好きなように扱ってください。」
推しとその親友から出た言葉に私は焦った。
「いえいえ、私にあなた達を逆に養わせてください。あなた方を好きなように扱うなんて、そんなこと私にはできません。だって私はあなた達を一目見た時から、見返りなんて求めていませんでしたから。」
私は多少噛みながらも早口で言葉を紡いだ。私の言葉に少々驚いた顔を見せた二人。その顔に私は少し笑みを溢した。
彼らを家にあげ、とりあえずは家にある空き部屋を貸した。昔ここに住んでいた親族が使っていた布団を久しぶりに出して、それに寝てもらった。次の日、その匂いが彼らからして泣きそうになったのは言うまでもない。
「これ、私の兄のお下がりですけど、よかったら使ってください。」
そういって渡した兄のお下がり。何かに使ってくれと置いて行ったのはこのためだったのかとすら思う。渡した洋服はどれもサイズピッタリで、恐ろしいくらいだった。
「ふむ、とても綺麗な洋服ですね。」
「君のお兄さんは本当にいいセンスしているよ!」
私の兄の洋服をたいそう気に入ったようで、彼らは服を着ると上機嫌になっていた。兄のお下がりだけでは心もとないと思った私は、私の次の休みの日に彼らと一緒に買い物に行くことを約束した。
「あなた方はこの世界では目立つ存在です。だから、お願いです。本来の姿で外には出ないでほしいです。」
私は彼らに架空の存在だと伝えられず、言葉を選んで頭を下げた。その姿を見た彼らは私の頭を上げさせ、「命の恩人の頼みなら」と了承してくれた。命を助けた代わりに利用しているような感じになってしまって申し訳ないと感じながら、私はにっこりと笑った。
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作者名:シズク | 作成日時:2023年9月24日 23時