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授業終わりの食堂。
部活までに早めの夕食を掻き込む者も居れば、ドリンク片手に勉学に励む者も居るし、騒ぎ立てる複数人も居る、至って普通のいつも通りの放課後。
そこで、キョロキョロと不自然に辺りを見渡す監督生は、ある生徒を見つけるとニィと口の端を上げる。
獣耳が生えたガタイの生徒の頭をおもむろに掴み、男の頭の上から顔を覗き込む。
「みーつけた!」
「げ!お前…!またか?」
「過去のレポートちょーだい?今度はねー…錬金術の、ンー。回復魔法のやつ!」
両手を揃えて、可愛く首をかしげて見せる監督生を「可愛くねえ」と一蹴した男は、以前まで監督生の事を虐めていた例の上級生の一人である。
「…前の一件で弱み握ったつもりかもしれねェが、俺はお前を一瞬で潰すこともできるんだぜ?」
親指で何もない背後を指す男が何を示しているか。彼は、某国でそこそこのお坊ちゃんらしく、両親が大物政治家なんだとか。
多分、それを言っているんだろうけど、もとよりこの世界に居場所なんてなかった監督生にはどうだって良かった。
この男は、あれでいて俺に対して一瞬でも怖いと思ってしまったのだろう。目を覗き込んで、笑いかけてやれば、その瞳の中に恐怖の色が滲むのを知っていた。
ある意味扱いやすい男の事を、実のところ監督生は気に入っていた。
「あは、楽しみですね。俺先輩の事だあいすきだから、滾っちゃうなあ」
首を傾けた監督生の襟元からチャラ、と小さな黒い石が一つぶら下がるネックレスが見え、それに男はぶるりと身を震わせ、マジカルペンを握りしめる。
実際、魔法石を全て取り上げられた彼のそれは、魔法など込められていないただの装飾品なのだが、余程前のことが懲りたのだろう。黒い色を見ただけで、先輩の耳はへたりと伏せてしまった。
あぁ、ごめんね、可哀想に。
まあそれでも、先輩を怒らせてしまって、魔法を使われてしまえば俺に勝ち目はない訳で。最悪の事態に備えて、彼の太い首の頸動脈を探り当て、手を添わせる。
それに気が付いた先輩も、マジカルペンを俺のこめかみに押し当てた。
恐怖が滲んだ目で、威嚇するように鋭くにらみつける男と、いつでも首を締めあげれるような体制で微笑みを落とす監督生の一触即発の空気がその場に流れていた時、生徒ならば誰でも見知った第三者の声が「おやおや」と頭上から落とされた。
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副村(プロフ) - やまかさん» わー!ほんとだ!!!見返ししていなかったのが仇となりました…。お恥ずかしい限りです。申し訳ございません。ご指摘ありがとうございます。これからもご愛読いただける作品になりますよう努めてまいりますので、よろしくお願いいたします…! (2020年10月11日 2時) (レス) id: f5b1efd963 (このIDを非表示/違反報告)
やまか(プロフ) - いつも面白いお話をありがとうございます。これからも陰ながら応援させて頂きます。 (2020年10月11日 2時) (レス) id: 889b8b96c0 (このIDを非表示/違反報告)
やまか(プロフ) - はじめまして、いつも拝読させて頂いおります。1つ訂正して頂きたい箇所がありましてコメント致しました。クルーウェル先生の名前の事なのですが、『デイヴィス・クルーウェル』です。『デイヴィル』となっておりますので訂正して頂けると幸いです。 (2020年10月11日 2時) (レス) id: 889b8b96c0 (このIDを非表示/違反報告)
副村(プロフ) - 星猫さん» 知っているアニメ…!?副村(私)のでしょうか…?最近は殆どですが、数年前はアニメ観まくってましたー笑 (2020年9月30日 2時) (レス) id: 7af6887a6c (このIDを非表示/違反報告)
星猫 - 副村さん» 知ってるアニメは何ですか? (2020年9月29日 22時) (レス) id: dba8a79b51 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:副村 | 作成日時:2020年9月23日 22時