P−13◆何とかなる、よね ページ16
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Aが心の中で「ど〜しよ〜〜」などと叫びながら辺りを駆け回っていることなど夢にも思わないであろう目の前の彼は、詰めていた距離を戻しながら尋ねた。
「ね、名前は? オレはエース。エース・トラッポラ」
「──あっ、A! A・クロウリー!」
心の中で疾走する自分を食い止めてからだったため答えるまでにラグが生まれてしまったが、エースはさして気にする様子もなく「名前もカワイイ感じじゃん」なんて言っている。
──ていうか苗字も言ってよかったのかな、「あれ、学園長と同じ……」とか思われるかな、でもまぁ知られるのも時間の問題だろうしいっか、とまぁこんな風にプラスの方向に考えをまとめるのに所要した時間はおよそ3秒。
「よろしくね、エース!」
なるようになるよね、の精神で、Aはそう言ってにっこり笑った。
──うわ可愛い、そんな知能指数の低下を感じる感想がエースの頭にパッと浮かぶ。そして着々と増殖してその頭を埋め尽くしていく。
しかしエースは何とかタイミングを掴んで「自分言い聞かせモード」に突入した。
ここは男子校ここは男子校ここは男子校。
周りにいる奴全員男。オッケーオッケー。
Aが思わず戸惑うほどの長い呻き声とため息を経て、エースは顔を上げた。
「……よく産まれる性別間違えてるとか言われねえ?」
「ドウカナ〜」
目を逸らすタイミングが不自然だった自覚はあるが、まぁきっと大丈夫だろう──と、今度はAが自分自身に言い聞かせる。と言うか大丈夫じゃないと困る。
「えーっと、まぁそんなことより、エースは──」
「皆さん、お静かに!! 入学式を始めますよ!」
いつの間にか前に出てきていたクロウリーのその言葉で、鏡の間を包んでいた喧騒が静寂に塗り替えられていく。
緩んでいた空気が引き締まるのを肌で感じて、つられてAの表情も強張った──のも束の間。
「んで、オレが何?」
「えっ!? いや明らかにまた後での流れでしょ! 始まるってば!」
「後っていつ」
「いつって……ていうか何でちょっと拗ねて」
「そこ、静かに」
「あっ、ハイ……」
────
開式から果たしてどのぐらい経っただろう。
学園長のありがたーい歓迎のお言葉(めっちゃ長かった)や、寮長達による各寮の説明(イグニハイド寮長は何とあのタブレットを通して話していた。謎が解けた。あとサバナクロー寮長が二、三言で終えていて場に衝撃が走った)などを経て、今は闇の鏡によって新入生達が寮分けをされている。
P−14◆ちょっと長めな寮分け→←P−12◆距離感近めな同級生
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ヒメアミ(プロフ) - もちうさぎさん» お話が進んだりユニーク魔法とかがお披露目になったりすると多分速攻でバレる(?)と思うんですけど、一応某塔の上のプリンセスを元ネタにしてます……!😌 (2023年4月9日 14時) (レス) id: 773d896b8c (このIDを非表示/違反報告)
もちうさぎ - 夢主ちゃんのモデルって誰ですか! (2023年4月9日 5時) (レス) id: c2ca67a91e (このIDを非表示/違反報告)
ヒメアミ(プロフ) - ゆあさん» マジですか何よりでございますわ!!🥰彼にはただのマブで終わらず頑張ってほしいですね(誰目線?) (2023年4月7日 17時) (レス) id: 773d896b8c (このIDを非表示/違反報告)
ゆあ(プロフ) - もう今回も最高でございましたわ!エースと仲良くなっちゃって!そのままくっつけー!!という願望 (2023年4月6日 22時) (レス) @page20 id: ce509c1850 (このIDを非表示/違反報告)
ヒメアミ(プロフ) - ゆあさん» コメントありがとうございます!! 続け方には気を付けてるのでそう言っていただけて何よりです〜〜😭 頑張ります!!💪🏻 (2023年4月4日 12時) (レス) id: 773d896b8c (このIDを非表示/違反報告)
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