寮長flushed ページ9
｢君たち！どういうつもりだね！？こんな時間まで一体何をしていたんだ！｣
寮に戻った頃にはもう時すでに遅し。
カンカンに怒った寮長が仁王立ちで出迎えた。
ローズハート寮長の顔はタルトの上の苺のように真っ赤っかだった。
三人のゴクリ、と唾を飲む音が重なる。
｢いやぁ...これには色々と事情がありまして...｣
｢その...やむおえずというかなんというか...｣
慌てて弁解を試みるが、寮長の顔はますます赤くなるばかり。
どうやら逆効果だったようだ。
｢言い訳は許さない、罰として三人とも首をはねて...｣
｢まあまあリドルくん〜、一旦落ち着こうよ〜｣
マジカルペンを振るいあげた彼の手を止めたのは、同じ寮の三年生の声だった。
｢ケイト、それにトレイまで、二人ともなんだい。ルールを破るものには罰を与えるべきだ！｣
｢確かに〜、一年生ちゃんたち三人は寮に戻るのがちょっと遅かったかもしれないけど、なにか理由があるんじゃないのかな〜｣
｢理由も聞かずに罰するのはフェアじゃないだろ？｣
先輩二人の言葉を聞き、しばらく黙り込んだ寮長。
はぁ〜、と長い溜息をひとつはいてから私たちに向き直った。
｢仕方がない、罰則は理由を聞いてから考えよう｣
腑に落ちない、という顔をしながらも、戻るのが遅れた理由を黙って聞いてくれた。
｢つまり、Aくんが迷子になって、二人が探しに行っていたと...｣
うーん、と考え込む寮長。
手に汗握りながらも、どうか許して貰えますように、と心の中で願った。
それは二人も同じのようで、両脇から緊張感が伝わってくる。
｢今回は、見逃すことにしよう｣
｢よっしゃ！｣
｢本当ですか！ありがとうございます！｣
思いっきりガッツポーズ決める二人。
私も嬉しくてか、安堵からか、自然と頬が緩んだ。
次はないからね、と念押しされてローズハート寮長は足早に自室に戻って行った。
｢はぁ〜よかったぁ〜｣
へなへなと肩を落とすエース。
｢先輩方も、説得してくださりありがとうございました｣
｢いいのいいの〜、まだ一年生なんだし、困った時はお互い様だよ〜｣
ケイト先輩がヒラヒラと手を振って笑う。
｢うちの寮長、あんなだけど本当は良い奴なんだ。気を悪くしないでくれよ｣
トレイ先輩が困ったように眉を下げた。
三年生にみんなでお礼を言って、談話室を後にした。
今日はなんだかとても疲れた。
けど、悪くはない、そんな気分だ。
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作者名：ねまき | 作成日時：2020年6月19日 22時
