三ノ二 ページ15
「は〜ただいま〜」
「ユウ殿。お待ちしていた」
袋を提げてご帰参されるは、某と似た境遇でこちらの世界に迷い込み、紆余曲折を経て学園に入学された御仁である。
一連の某の昔語りは、ユウ殿がエース殿とデュース殿を寮に招いて歓談していたところに某が帰参し、
「今、僕がこの世界に来た時の話をしていたんです。そういえばサギリ先輩はどんな感じだったんですか？」
との問いを受け、話し込んでいたのである。
話の途中でグリム殿が「そういえばツナ缶のタイムセールがあるんだったゾ！」と通宝(この世ではマドルと言っただろうか)も持たずに駆け出してしまったゆえ、ユウ殿がその後を仕方なしに追って離脱していたというわけだ。
目当ての品を手に入れほくほく顔のグリム殿は大切そうに一缶を抱えており、ミタマの元へ二足で駆けてきて、誇らしげに掲げた。
「見ろ！ オレ様のツナ缶なんだゾ〜！」
「ユウ殿、ボクの油揚げは……」
ある？ 聞きたげな眼。某は腕の力を解きミタマを放す。
ミタマは鉄砲玉が如く買い物袋に飛び付き中を覗き込む。
「買ってきたよ、はいどうぞ」
「やった！ ありがとうユウ殿ー！」
お徳用油揚げを両手に掲げ、喜びの舞を披露。上機嫌なミタマの舞にグリム殿も参入し、好物を手にくるくると踊る。
「単純な奴ら」
好物で喜ぶ素直さに、慶びを全身で表現する愛い様子は見るに飽きぬ。延々とうち眺めていられる心地だ。
「そういえば、先輩の好物って何かありますか？」
「某の、であるか」
デュース殿が問い、某は頭を捻る。
ミクリの民たる者は味の濃淡も品の多少も問わず、いただけるだけでもありがたい、と生まれたその時から教え込まれるもの。それゆえ好き嫌いはほとんど無い。
「ふむ……食べられるものであれば、何でも」
「何でもか〜。好物贈って好感度上げ作戦失敗だな、デュース」
「なっ、ぼ、僕はそんなこと……！」
「ちょっとくらいは？」
「お……思っていた……」
「はは、ここで自白するのがデュースなんだよな〜！」
ばつが悪そうに頬を赤らめるデュース殿に、戯れに揶揄い悪戯児の笑顔を見せるエース殿。仲良きことは美しきことである。
「む、今は何時であろうか」
某のいた世界の時間という概念は、こちらと比べざっくりとしもので、時分秒といった単位もなかったものである。
ある約束の時間を思い出し、時計を見ると、なんと五分前ではあるまいか。
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IDee(プロフ) - 五月雨さん» コメントありがとうございます！ 最近は更新を滞らせていたのですが、大変励みになりました。時間を見つけ次第更新していきたいと思います〜！ (5月24日 21時) (
レス) id: af1699faf6 (このIDを非表示/違反報告)
五月雨 - 面白い！！更新楽しみにしてます！！ (5月24日 19時) (レス) @page24 id: 301607acc2 (このIDを非表示/違反報告)
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