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『……かみ、かみ……………』
無計画に建物内を回るのは危険だ。とりあえず館内図を組み立てよう。
一旦窓枠辺りに留まらせて、メモ用紙に今見た物を簡単に描いていく。
再び視覚を共有する。
時間的に夕食中、もしくはそこそこ解散し始める頃。
見つかったら面倒だな……特にジャミル。察し良さそうだし………
「ぁ?エバ、じゃねぇな、マノでもねぇし………」
『げっ………なん、で、いるんだ…!』
ぬいぐるみの顔を覗き込む、見慣れた顔。
そうか、そうじゃん、すっかり忘れてた、スカラビア……ッッ!!
まさかここで壁にぶつかるとは思ってなかった。そういや集団はあんまり好きじゃないんだっけ………
「あ!ライヴのやつか!んん、でも何でここに…?」
『なるべく遠くに、高く、早く………!』
「ぉわっ、威勢いいなー」
『こんの、アホッ…!』
ひょい、とすぐに腕の中。こんなのアリかよ。空気読めや。
"すげー"とか感心してくれてるけど今この状況だと煽りでしかない。
早く離してくれ、なんて願いも儚く部屋へ連行された。何故。
2人部屋だけど相室の奴はいない。
間近で男の顔を見るのは少し嫌だったため、視覚を切って聴覚だけに専念。許せ。
「なぁんかさぁ、カリムの様子可笑しいんだよなぁ。朗らかなアイツが連日怒ってて。信じられる?」
『……は…?カリムが…怒ってる……?』
「俺らにも止められねぇし、監督生とグリムも巻き込んじまったし……はぁ〜、ライヴごめんなぁ……お前の大事な後輩、守れなくて」
いつもとは違う声色。明らかに沈んでいて、少しだけ泣きそうな声。そんな気がする。
一体スカラビアで何が起きている?
カリムは言ったら悪いが、負の感情をどこかに置いてきたような人間。怒り、悲しみなんか吐露したことないはず。そんなアイツが暴走?
『……これ、俺だけじゃどうにもならないかも』
誰かに助けを求めたい。こんな重大なこと俺1人じゃ無理がある。
でも頼れる人なんていない。
とりあえずカリムの周辺を警戒…?いやいや、でも、うゔん…………
結局いい案は浮かばず、その日はこの部屋にぬいぐるみが置きっぱなしになっていたのだ。
ユウとグリムがオクタヴィネルに転がり込んだとも知らずに。
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作者名:諒 | 作成日時:2020年10月16日 20時