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ドアをノックしても返事はないので少し申し訳ない気持ちもあるけど、部屋に入らせてもらう。規則正しい寝息が聞こえて長い時間じゃなかったけど、ちゃんと寝れてよかった、とひと安心した。
軽く頬を叩いても起きる様子はないし、できるならこのまま寝させてあげたいところだけど、栄養のある食事をむらたくさんはしていないだろうし、ちゃんと食べてもらわないと、と思ってさっきよりも強い力で体を揺らした。
「むらたくさん、起きてください」
私の声と体が勝手に振動されているという事実で、閉じていた瞳が少しずつ開き、私の視界にも綺麗なふたつの眼が映った。
「あー...ごめんなさい、結構寝ちゃってた。ご飯まで作って貰って申し訳ない」
私の傍らにおいてある土鍋と食器を見て、申し訳なさそうに眉尻を下げる。気にしないでください、さあ食べましょ?と誘うと少しおもそうなからだを少しずつ持ち上げて、ありがとうございます、と微笑んでくれた。
どれくらい食べるかわからなかったので適当に呑水に入れる。先にむらたくさんに渡して、自分の物もついで2人で手を合わせ、いただきます、とまだ湯気がすうっとのぼるそれを、ふたりで咀嚼した。
1口食べてすぐに、むらたくさんはおいしい、と言ってくれた。そう言って貰えると私も作りがいがある。嬉しくなって1人でに笑い、自分の呑水に入れた分を完食した。
多いかな、と思うくらいの量作っていたけど、むらたくさんが結構食べてくれて、ご飯粒1つも残さずペロリとたいらげてくれた。ご馳走様と両手を合わせると私に向かってもう一度ありがとうね、と言ってくれた。
「久々だよ、こうして手料理を振舞ってもらうの。他の人になら弱いとこ見せるの恥ずかしいって思うのに、Aちゃんなら別にいいやって思えるんです。...褒めてるんですよ?ほんとに」
恥ずかしそうに言うむらたくさんを見て、多めに作ってよかった、と思う。食欲はあるみたいだし、いつも通り普通に睡眠をとったらすぐに体調は良くなるだろう。
「えへへ、ありがとうございます!むらたくさんに褒められるとなんか照れちゃいます。ちゃんとむらたくさんは誰かに頼ってくださいね?もちろん、私にも、ですよ!」
そう言うと、むしろAちゃんじゃないとダメな時だってありますから、呆れずに僕の相手してくれる?と私の目を見つめて言ったので、全力を尽くして相手しますよ!と笑顔で答えた。
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かすがわ(プロフ) - 楽しく小説読ませていただいてます! 少し気になっしまったので、言わせていただくのですが、福良さんは河村さんのこと確か「河村」呼びだった気がします…! (2019年9月19日 23時) (レス) id: 13a71039dd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おとわ | 作成日時:2019年9月5日 0時