LOSER【N.J】 (ページ18)

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校門を出ると、黒いスマートな車が一台停まっている。
高級車っぽく見えるあれが、淳太の運転する左ハンドルの車。

「ごめん喋ってた」

『いやええよ。そんな待ってへん』

助手席に乗り込んで、ベルトをカラカラと出した時。

遠くから何かがチラチラと視界に入る。

『…あれ誰や。A呼んでんちゃうん』

「…誰が？」

視力が悪いから全然見えへん。
声も何か叫んでるけど何言うてるか分からんし。

『行かんでええんか？』

「……そやなぁ行った方がええな」

ごめん、とまた一言謝って手に持っていたベルトを外す。
誰やねんもう。

小走りでその呼んでるっぽい人の所に行く。

「…お前かよ！」

もうそやったらわざわざ降りてこやんでよかったやん…

藤「何そのガッカリ感笑俺ちょっと嬉しかったのにー」

「待たしてるからはよしてくれる？」

藤「彼氏？」

「………お兄ちゃん」

お兄ちゃんという単語があたしにはどこか異国の言葉に聞こえる。
それほど言い慣れないものやから。
消えてしまった、言葉やから。

藤「お兄さんかー。それにしては…」

「…何？」

藤「いや別に笑また今度でいいわ！ごめんなぁー笑」

一瞬何かを考えるような藤井に少し焦った。
何か見透かされたのではないかと。
このアホみたいなやつにそんなことはないと思うけど……。

『何やったん』

「また今度でいいって」

『何やねん笑』

「…ほんまにな」

内心焦りしかない。
もしバレて大学内に広まってしまったら…

いや、考えすぎか。
淳太の顔だって見えたのはチラッとだけやろうし。

藤井はそんなことするやつじゃないと思いたい。