サディスト少女は今日も今日とて、【文豪ストレイドッグス】 (ページ17)

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第13話ページ17

目を覚ました時、まず目に入ったのは猫だった。足の上に、猫が二匹。其れを退けようとすればにゃあ、と耳元で声がする。…右肩に、ちっこいのが一匹。あとは、

無表情で上半身を少し前に傾ければ、頭の上から白いモコモコが落ちてくる。…頭に、一匹。足の上の猫を退けてまた気付く。足の、下にも。

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踏まないようにやっとのことで立ち上がれば、いつの間にか目の前に立っていた女。

「…やあ、お目覚めかい？お兄さん。」

そう言葉をかけられ舌打ちをするも、無視を決め込んで彼女は帽子を被せてくる。確認してみれば其れは先刻まで被っていた物であり、猫による傷は一切なく毛も付着していなかった。…真逆、

「…此れはお前なりの気遣いか？」

「そう思うのならそう思っとけばどう？……まあ、帽子は洗えないからね。うん、避けておいた。」

…だからなかなか嫌いになれねぇんだよな。一応礼は述べたが、正直彼女の優しさには慣れておらず少し照れ臭い。紛らわそうと、先刻の猫に触れようとした時。

「あ、そうだ中也。中也って寝る前の記憶はあるかい？どんな話したか覚えてる？」

そう、彼女に笑顔で問われた。
…可笑しい。笑顔で聞かれているにも関わらず、何故背筋がピリピリする？

もっと言えば何故。身の危険を、感じる？

「いーや、実はほとんど覚えてねぇんだよな。お前にデートデートってせがまれたのだけはなんとなく？」

初めて、マフィアをやっていて良かったと思ったかも知れない。ドキドキと心臓は早鐘を打つも、俺は普段通りの表情で肩を竦める事に成功する。…ここまでしても騙し通せる確率はかなり低いが。

だが、彼女も殺気を漏らしてしまうほど必死だったらしい。〝そう〟と若干無愛想に言った後ホッとしたような表情を浮かべ、足元の猫を撫で始めた。

先刻まで寝ていたからだろうか。ぼんやりとする頭で彼女を見つめ考える。正直、どうやって俺を眠らせたのか位は聞きたいが、おっかなくて聞けない。防衛本能だ。
…まあ解りそうもない事を悩み続けるなど時間の無駄か。

小さく息を吐いて目を閉じれば、憎たらしいアイツの真っ赤な顔が思い浮かぶ。

太宰が知ったらなんて言うだろうか。ちょっと自慢してみたくもあるが、やめておく。下手すれば彼女に殺されるだろう。

忘れようにも、忘れられない。
彼女の恥じらう姿は奴の本性を知っている身としても愛らしいと思えるものだった。