☆― 23 ―☆ ページ23
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「Aさん？終わってますよ？」
A「…あ。」
カップコーヒーの自販機前。
いつの間にかルカちゃんが傍にいて、ちらりと私の顔を窺い見る。
開いたカップコーヒーの取り出し口からは、
見えるはずの湯気はなくて、
私は既に熱を失ったコーヒーを手に取った。
「最近いませんね？二宮さん。」
ルカちゃんが自販機にコインを落とす。
先週は１日も欠かさず会っていたのに、
それが今週は１度もなくて、なんだか落ち着かない。
１日だけ、だったなら何とも思わなかったかもしれない。
だけどそれが３日も続くと……。
A「………。」
最後に会ったのが びしょ濡れのアイツだっただけに、
結局は風邪を引かせてしまったんじゃないかと気にはなってる。
それでも、私にはやっぱり打つ手がなかった。
アイツの連絡先は今も知らないままだし、
家だって分からない。
分かっているのは―――――、職場だけ――――。
A「気分じゃないだけ、でしょ。」
「そうなんですかね〜？」
ちょっと残念そうなルカちゃんが、
ふ〜っと息を吹きかけながら出てきたばかりのカップを口につけた。
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退社する人に紛れて私もロビーを進む。
出入口付近を ざっと見まわしてみたけれど、
やっぱり今日もアイツは いない。
A「(気にしたって仕方がない…、か…。)」
だから少しウィンドウショッピングをして帰ろうと、
会社の最寄り駅より大きな駅へと少しだけ遠回りすることにした。
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もうすぐ梅雨時期に入るから、
どのお店もレイングッズが充実し出していて、
それを眺めながら ぶらぶらと歩く。
A「……。」
ショーウィンドーのガラスに映るリーマン。
似たような背格好を目で追うのは、
A「(………体調が気になるだけよ。)」
.
そんな私の目に見覚えのある姿が映って、
A「(あ…。)」
「Aちゃん。」
私が気付くのと同時に、聞き覚えのある声が呼び止めた。
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作者名：舞
作成日時：2016年5月15日 0時
