19 ページ19
.
目を覚ますとそこにフェイの姿はなくきっともうフェイには会えないんだという事を悟った
意識を手放す前に最後に目にしたフェイの切なげな表情を思い出し胸が苦しくなった
『フェイ…っ』
会いたい。
住む世界が違ったとしても貴方と一緒になりたかった。貴方の事をわかってあげたかった。貴方に全てを捧げて共に生きたかった。
溢れだしそうな涙をグッと堪えベッドの上でうずくまった時、フェイから貰った花束の存在を思い出し顔を上げた
あれ、私昨日持って帰ってきた記憶ない…もしかしてあそこに置き忘れてきた…!?
すぐに取りに行こうと立ち上がると机の上に置かれていた花束に目を見開いた
良かった…若干よれてしわしわになっているし所々血で汚れているけど戻ってきてくれた。フェイがわざわざ取りに行ってくれたんだ。
『…ありがとう、フェイ』
窓を開けて夜空を見上げると綺麗な三日月が浮かんでいてフェイの瞳と重なって見えた。
そして初めて会った時の日からこれまでの事を思い返し小さく微笑み ” 愛してる ” の文字をを口にした
❀✿❀
それから数ヶ月、私は変わらず大好きなこの街で花屋を続けている。
フェイが私に会いに来てくれたことは1度も無いけどフェイの事を忘れた日は1度だってない。
「まあ、素敵なドライフラワーね」
『ありがとうございます!』
壁に飾られていたドライフラワーが入った額縁を見てお客さんが言った。
あの時フェイが私にくれた花束をドライフラワーにしたんだ。
『ありがとうございました!またお越しくださいませ!』
お客さんが引いて1人になるとドライフラワーを見つめて微笑んだ
フェイに会いたい。でもフェイが決めたなら私はそれを尊重すると決めたんだ。それになんだか…すぐ近くにいるような気がするんだ。
カランコロン
『いらっしゃいませ!…あれ?』
扉が開く音がしたはずなのに振り返ってもそこには誰も居なかった
不思議に思ったがテーブルの上に置かれた一輪の花を見つけて店を飛び出した
辺りをキョロキョロと見渡したがフェイの姿は無く諦めて中に戻りテーブルの花を手に取った
『ふふっ、またドライフラワーにしようかな』
花が枯れるまでは貴方を想う事をどうか許して欲しい
でも私はきっと貴方を忘れる事はできない。だって…
この花と恋が枯れる日はきっとやってこないから
Fin.
.
3人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:はっとり | 作成日時:2023年11月20日 23時