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次は、とトントン様からちょっと右にずれた方向を指差した先を見れば、隣の人と会話をしている色素のうすい、博識っぽい男
”エーミール”と言うようで、どこか前世で聞き馴染んだ名前であった
「ザ・知識人って感じがするやろ?この屋敷の書庫の管理は完全に任せとるから、本を読みたかったり、知りたいことがあったらエーミールに聞くと良いめう」
相槌を俺が打とうとする前に、オスマン様が「そういえば」と話を続けた
フューラー様からメモ用紙とペンを拝借して、何かを書いたかと思えばその紙を俺に見せてきた
「読める?」
暗号の羅列にしか見えねぇそれは、多分この国の言語、もしくは世界の共通言語の文字なんだろう
多分文字なんだろうな〜、ってのは前の主人の館でもちょくちょく見かけてたけど暗号というか、模様の一種にしか見えなかったし
「読めない…です」
本当に全く読めない
日本語が共通言語になってる世界に生まれたかった
シャンプーすら出来ねぇこの体が日本語を読めるのかは知らねぇが
読めないと回答した俺に「そっか」と相槌を打って
「なら、いつかはエーミール先生と一緒にお勉強しような〜。エニスもやで」
「したくないわ」
「するめう〜」
ショッピ様のことはもう諦めたのか、それとも慣れたのか
ほんの少しチラッと右隣を見てみれば、ショッピ様に頬をつつかれてもほとんど反応を示していなかった
目線を元に戻すと、エーミール様の隣にいる人を紹介し始めた
「隣の瓶底ぐるぐる眼鏡がチーノ。特にこの屋敷において特別な役割は無いんやけど……、急に麦茶を勧められたら飲まんほうがええよ。分かった?」
「は、はい」
「ん、いい子めう〜」
なんでダメなんだろう。毒でも入ってんのか?
いや、そんなの別にエニスだけに言うなら分かるが俺も含めて言うのはなんかおかしいように思う
つーか、エニスは多分話聞いてねぇし
毒じゃない、また別のこと……?
………まぁ、気にしてたって意味無し、か。
「飲まないほうがいい」って言われただけで、
「飲むな」とは言われてねぇからな
本人であるチーノ様に「飲め」と言われれば、それ以外の選択肢は俺には無い
考えたって無駄なんだろう
「ひとまず今この食堂にいる全員の紹介は終わりやな。残りが仕事から帰ってきたら、また教えてあげるで〜」
遠くの方から聞こえた「もうそろそろできる」と言う声は、おそらくひとらんらん様のものだろう
キッチンからは懐かしいカレーの匂いが溢れていた
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作者名:ねっこんこん x他1人 | 作者ホームページ:http://nekokobuta
作成日時:2024年3月20日 2時