07 ページ8
.
「Aくん」
ホークスの声に、びくりと肩が震えた。
振り返ると、いつもの笑顔を貼り付けたホークスが警戒しているのがすぐに分かった。
「何してんの？」
「何も、してへんよ」
名取はそんなホークスの事を気にもとめずに、僕の頭を撫で続ける。
「そう怒るなよ、ホークス」
にんまりと愉快気に笑う名取は、ホークスと目を合わせて手を下ろした。
妙にピリピリとした空気は居心地が悪い。
それに気付いているであろう名取は、まるで挑発をする様に僕を引き寄せる。
「久しぶりだな」
「そうですね、名取さん」
名取がまだヒーローとして活躍していた頃、ホークスと親交があったと聞いていた。
だが再会を喜ぶ様子は微塵もない。
ヒーローと敵、一時休戦だとしても腑に落ちないの当たり前だ。
ましてや、あの名取 雫を目の前にして。
「よっぽど彼がお気に入りの様ですね」
「お前もな」
「Aくん、いい子なので」
「前よりはな」
ぱっと解放された身体が自由になる。
ゆっくりと距離を取って2人の様子をただ眺めていた。
いくら一時休戦だと言っても、名取を信用するわけがない。先程言われた個性の使い方はゆっくり考えていけばいい。
僕を守る時間がないと言っていた名取の言葉が引っ掛かる。
今までいつ彼が僕のことを守っただろう。
思い当たる節なんて何一つもない、むしろ逆だ。
「じゃあ呼ばれているから、またなA」
名取は僕に手を振って退室する。
本当にわざわざ僕に助言を言いに来ただけだった。
いちいち振り回されてしまう事への苛立ちが、いつも後から押し寄せる。
「Aくん、大丈夫？」
「大丈夫」
心配そうに僕の顔を覗き込むホークスの纏う雰囲気がようやく和らいだ。
いつもの彼の様子にほっとする。
「あーあ、俺よりも名取さんの方が先にAくんに出会ってるって考えるとつらいなぁ」
「どっちが先かなんて関係あるん？」
「あるよ、さっき牽制されたし」
珍しく不貞腐れたホークスは、不満そうにわざとらしく口を尖らせる。
今はホークスが年上には見えない。
「名取と張り合う必要ない。ホークスの方が大事やから」
「嬉しいこと言ってくれるね、Aくん」
すっかり上機嫌になったホークスは笑顔で僕の頭を乱暴に撫でる。
比べ物にならないほど、ホークスのことを信用しているし大事に思っているのは本当だ。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 430人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
朝ギ(プロフ) - 柑橘系さん» コメントありがとうございます！まだまだ長くなりそうなのでお付き合いいただけると幸いです。素敵なコメントが励みになります！ (11月7日 0時) (
レス) id: 6f172a3ee3 (このIDを非表示/違反報告)
柑橘系(プロフ) - 助かる…助かる…こんなに長編なのに一晩で読んじゃいましたすき…いい感じの距離感が少しずつ縮まったり色んな覚悟が混ざったりで…！ほんと助かりますありがとうございます！！！椿くんもっと甘やかされてデロデロにされてええんやでとニコニコしながら見守ります！ (11月2日 14時) (レス) @page27 id: f65fda0114 (このIDを非表示/違反報告)
朝ギ(プロフ) - あさん» ありがとうございます！更新ペースにムラがあり申し訳ありませんが、楽しんで読んでくださると嬉しいいです！ (7月9日 15時) (レス) @page17 id: 6f172a3ee3 (このIDを非表示/違反報告)
あ - おもしろくていっきよみしちゃいました❕ 更新頑張ってください❕❕ (2023年4月10日 21時) (レス) @page10 id: e2732a4f31 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：朝ギ | 作成日時：2023年1月31日 22時
