【男主】落ちる様くらい綺麗に【僕のヒーローアカデミア】 (ページ34)

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爆豪勝己 side.

『えー、今起きたん？はよ来てや』

｢うっせぇな、黙って待ってろ｣

電話越しに聞くおっとりとした訛りのある喋り方。

〝昨日の件で話しがある〟と伝えられ、先程起きたばかりでまだぼんやりとする頭を必死で覚ます。

時刻はとっくに昼を超えており、苛つきながら歯磨きを行っていると母親の怒鳴り声が聞こえてきた。

さっさと準備をし、伝えられた住所に向かうが想像していたよりも馬鹿でかい日本家屋の屋敷に驚いた。

｢こんにちは、爆豪くん｣

家のチャイムを鳴らす前に私服姿の椿が俺を見つけてひらひらと手を振る。

｢昨日は無意識やったから自分でも驚いた｣

へらりと笑いながら椿は自身を指差す。間接的に何を言っているのか理解出来た。

今までこいつの個性は〝無効化〟だと思っていた。現に攻撃を消していたし…

だが騎馬戦で轟と言い争っていた椿があいつの手に触れるとだらりと力無く宙を舞った腕。

まるで力が抜けたようだった。

轟の表情からして、椿にやられたとしか思えない。

〝無効化〟じゃねぇな…と思っていたが俺との試合で見せたあの大太刀は一体何なんだ。

｢僕の個性は落椿。触れたら個性や腕、神経に心臓…相手の攻撃も落とせる…そう言ってきたけどこれはあくまでサブ｣

｢サブ？｣

こんなにもすげぇ個性がサブだ？椿は納得がいかないのか腑に落ちない表情をしている。

〝言ってきた〟ってことは今まで隠してきたんだろう。

｢椿の花は花弁が個々に散るのではなく、萼を残して丸ごと落ちる。それが、人の首が落ちる様子を連想させるため斬首のイメージがあってね、これが本来の落椿。君が見たのもこれ｣

椿が立ち上がると床から朱い大太刀が出てきた。禍々しい雰囲気に思わず息を呑む。

感じる瘴気に思わず鳥肌が立つ。

｢……………すげぇ｣

無意識に出た言葉だったがこれ程の個性を持っていることに何で使わねぇのかと疑問だった。

｢人間離れしてるし…気味悪いやん｣

かぁっと顔を赤くする椿が恥ずかしそうに俯く。

こいつでもこういう表情もするのかと意外にも人間らしいとこがあることに驚いた。

無駄に綺麗に整っている顔は中性的で、顔を伏せると長い睫毛が影を作る。

男のくせに醸し出す色気にドキリと高鳴った胸に舌打ちをした。

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