【男主】落ちる様くらい綺麗に【僕のヒーローアカデミア】 (ページ17)

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轟焦凍 side.

｢お前…ケガはねぇのか？｣

｢別に｣

いつものような嘘くさい笑みはなく、珍しく真顔の椿に何かあったのかと声をかけるも軽くあしらわれた。

こいつはいつも何も言わない。誰も信用せず１人で抱え込もうとする。

｢おい、なんとか…｣

｢気安く触んなや｣

黙って去ろうとする椿の腕を掴むと今まで感じたことのない程、恐ろしく冷たい視線を向けられる。

掴んでいたはずの腕かだらりと力なく落ち、全く感覚がないことに椿に個性を使われたのだと気付いた。

花弁が散って、消える。

ピクリとも動かすことが出来ない右腕。これは機能を落とされたか。

そのまま教室へと１人で去る椿の姿が見えなくなると同時に腕の感覚が戻ってきた。

大丈夫とは思っていたが恐怖からなのかどっ、と嫌な汗が背中に滲む。

｢轟くん…椿くんと昔からの友達なん？｣

｢幼馴染だからな｣

｢椿くん、なんか冷たくて怖いときあるよね｣

今日のことですっかりクラスメイトに歪な印象を与えてしまった椿はそんなこと気にもとめないだろう。

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A side.

翌日は臨時休校になったが家でずっと昨日の緑谷くんのことを考えていたせいか全く休まらなかった。

恐らく僕には微塵もない正義感や特別な何かが彼にはあるのだろう。

そんな緑谷くんに対して訳も分からず苛つきが押し寄せて、僕は焦凍に八つ当たりをしてしまった。

すぐに我に返り右腕を元に戻したがあんなに感情的になったのは久しぶりだった。

｢A、焦凍くん来てるで｣

ドアの向こうから聞こえる母親の声。

焦凍が自宅に来るのは小学校以来な気がする。思いがけない訪問者に自室のドアを開けると母親と焦凍が立っていた。

｢ゆっくりしていってな｣

｢はい｣

〝後で何か持ってくわ〟と言葉を残し、母親は僕の部屋を後にする。焦凍と２人きりになった僕は彼を部屋に招き入れた。

｢どないしたん？珍しいなぁ｣

｢いや、昨日は…悪かったな｣

謝るべきなのは僕のはずなのに。

何かといつも気遣ってくれる焦凍のことを気付いていたにも関わらず、僕は知らないふりで中学時代を過ごした。

そして、今も。

｢ごめんね、焦凍｣

だがそんな彼に甘える訳にはいかない。

焦凍は僕をどんどん嫌えばいい。

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