【文スト】肆・ネットでマフィアの首領と友達になってた件

一蓮托生たるものたち ページ28

○Seen-Keeper○

「少し改変したけど、現実に反映されたじゃないか。すごいなこれ、本当」

真っ二つに割かれた十数枚に至る紙の束がテーブルに投げ捨てられている。光源は、テーブルを中心的に照らし、あとは仄かに光があたるだけで、闇に包まれている。そのテーブルを挟むようにして、椅子が二つ向かい合っており、顔は見えないが、二人それぞれ腰を下ろしている。

「だが、あの女が全部壊していった」

先程の声よりも低く野太い声の主は、テーブルを強く叩いた。男の拳を受け止めたテーブルは壊れはしなかったものの、古い木製故に軋む音が響く。

「まぁ、彼女が本来(・・)の持ち主だしねぇ。でも、その分、リョウメンスクナの能力値は底上げ(・・・)されている。実際のシナリオよりもかなり強いじゃないか」

満足気にテノールの音が弾む。

「【シナリオ】の異能としてこれ以上にない成果はない。それは、あの娘じゃないと不可能だった」

ほの暗い電球色で、口元のみ照らされる。彼の言葉に、反対側に座る男は不貞腐れたように肯定した。それに対して、テノールの声の主は笑う。

「まぁ、君の気持ちもわからないことはないさ。でも、物事は順序だ。

もう布石は打たれてある、そうだろう？」

窘めるように、諭すように、言葉は柔らかくなる。それに伴って、ささくれていた反対側に座る男の態度は軟化していく。

「君は君の目的を果たすといい。君の目的の果ては、僕の好奇心を満たしてくれるものだと理解してるからね」

闇から見えた男の顔(かんばせ)。それは美しく、それでいて、怪しげな、危険を楽しんでいる瞳を持っていた。それは、闇の中からでもわかるほど、美しく、蒼く輝いていた。

その歪みに呼応するように、相方は口角をあげた。

「ああ、任せろよ、お前の期待に応えてやるよ」

テーブルの上には、まだ破かれていない紙の束が置かれていた。

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