検索窓
今日:2 hit、昨日:6 hit、合計:11,657 hit

ページ25

男は敦の身の上話を聞きたがった。異能力のことや、自身が獣害指定されていた張本人だとバレると厄介なので、四苦八苦しながらも、敦は彼に今までの人生を喋っていた。男は随分と楽しそうに聞きながら、適度に質問を重ねていた。聞き上手だったのだと思える。

話している内に敦も楽しくなり、彼に質問を重ねていた。ただし、互いに名前を打ち明けることはタブーにしておいた。本人曰く名前を教えるというのは、自身の存在を相手へ掌握させかねないものだというらしく、故にこの短いやり取りの中では、「お兄さん」と「少年」と呼び合うことにしたのだ。少しだけと考えていたのが、時計の針が正午近くになるまでついつい話し込んでしまっていた。近場の公園へと移動し、その一角にあるベンチの一つを占領していたのだが、敦はふと目についた時計の針を見て目を丸くした。

「仕事の途中だったんだ!」

「おや、残念だ。引き止めてしまってすまないね。いやぁ、少年、とても面白いよ」

薄く笑って、彼は立ち上がる。そのまま二人は公園から離れ、人混みへと向かっていく。

随分と(・・・)楽しませてもらったよ、ありがとう」

そう言って、男は雑沓の中に消えていった。敦はその背中に小さく手を振りながら、見送る。

携帯を開くと、国木田からの凄い数の着信があり、時折鏡花や、谷崎の電話番号も挟んであった。

──心配されている。

あわわと青ざめていると、背後から肩を叩かれた。突然のことに、ビクリと肩を跳ね上げる。

錆びついた機械のようにゆっくりと顔を振り向くと、にこやかな笑顔を浮かべた太宰が立っていた。

「やあ、敦くん」

「だ、太宰さん……」

*→←秘匿情報



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (21 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
69人がお気に入り
設定タグ:文スト , 森鴎外 , Twitter風
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

黒井蜜柑(プロフ) - イレイザーさん» 了解です。いえ、こちらこそありがとうございます!なるべく!なるべく早く更新いたします! (2021年4月7日 17時) (レス) id: 17dfef3a09 (このIDを非表示/違反報告)
イレイザー - 黒井蜜柑さん» そんな感じです!わざわざ返信まで…優しすぎて泣きそ((泣きます! ありがとうございます! (2021年4月7日 17時) (レス) id: 835185f078 (このIDを非表示/違反報告)
黒井蜜柑(プロフ) - イレイザーさん» ありがとうございます!リクは募集してるので構いません!夢主の幼少期の写真をキャラ達とかが見る?みたいな感じ?ってことでしょうか……(想像がついてない) (2021年4月7日 15時) (レス) id: 17dfef3a09 (このIDを非表示/違反報告)
イレイザー - めちゃくちゃ面白いです!頑張ってください!後夢主の幼い頃の写真を載せるっていうやつをやってほしいです。(リクエスト募集していたら、ですが) 応援してます! (2021年4月7日 15時) (レス) id: 835185f078 (このIDを非表示/違反報告)
黒井蜜柑(プロフ) - アニヲタさん» そうなんですよね。賢治くん、本当最強で助かります…… (2021年3月2日 14時) (レス) id: 17dfef3a09 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:黒井蜜柑 | 作者ホームページ:http://minanami2.naho.ayaka.  
作成日時:2021年3月2日 12時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。