【文スト】続々・ネットでマフィアの首領と友達になってた件

円転逸脱編-第五話- ページ40

○Seen-Operator○

「ここまで来てまだ物部天獄の顔を誰も見ていない。この混乱を期に自決といっても、殺戮ショーのようにでもなる可能性も捨てきれないな」

髪を掻き毟る。悩んでいる証拠だった。

「あの、お疲れ様です」

ことりと、ラムネが置かれる。驚いて、江戸川は顔を上げると、誘拐未遂にあったである。

「敦さんから聞きまして。ラムネがあるとがんばれるのだとか」

変な情報を漏らされていた。貰わない理由も無かったので、さっさと開けて飲むことにした。蓋を開けると、小さく炭酸が爆ぜる音がした。煽れば、中のガラス玉が液体の中で揺れた。

──気合を入れ直す。

恐らく戦闘は避けて通れない。そこはもう実働班らの仕事である。

ただし、この状況下だ。下手な手を打てば、最悪の事態を引き起こすなんてこともないわけではない。

宗教団体の集団自決というのは、大抵追い詰められたときに行われる。それに。

「あの藤白という男が講堂内にいる以上、あまり下手な動きはできないし──」

思考は巡る。太宰達の通信機越しでもひしひしと伝わる。あの男は、人を殺すことを厭う人物ではない。また、彼の言葉は、あの幹部たちよりも信頼に足る。そう信じさせるまでの、カリスマというものを持っている。

それは曉のあの(・・)異能を持ってしても(・・・・・・)、この男を越える信頼は不可能だ。

「藤白さん？藤白揖夜さんですか？」

は首を傾げる。だらしなくオフィスチェアに腰掛けたまま、江戸川は彼女を見た。

「え、なに、知ってんの？」

疑心の緑眼に見つめられて、ややたじろいだが、狩野は自身の記憶の中の彼を思い出して、表情を緩めた。

＊→←＊

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す