【文スト】続々・ネットでマフィアの首領と友達になってた件

＊ ページ39

『おかえり、国木田。それで、何か収穫はあったかい？』

通信機越しからでも、わかるほどの先程とは雲泥の差の弾んだ声音で国木田を揶揄う。結果はわかりきっている。

「流石に二回目は失敗しました」

苦々しい声で結果を告げる。どうやら曉の異能は一度失敗したら同じ技能を二回振ることは不可能だという。特例もあるが、基本は不可能だ。

「あの内容は聞こえていました。先程のものといい、あまりいいものではありませんね」

国木田はもう一つの方の本を開く。

『……肉筆というのは感情が篭もりやすい。当てられたんだろう』

江戸川は淡々と呟く。呪術と異能は同じなのか、違うのか。どちらにせよ、事象に働きかけるものだ。動物変化の異能ならば、肉体という事象に動物の能力を付与するといったアプローチを行う。呪いもまた、変わらない。

ぱたんと本を閉じた。

「物部天獄は、信徒全員との集団自決を狙っています。それを使い、今度こそ───日本を滅亡させる算段のようです」

もうすぐだからといったあの発言の意図が繋がった。江戸川は、背筋に冷や汗が伝うのを感じた。

『他には何かあるか？』

江戸川の声音に焦りが混じる。

「こっちには『邪神について』？といった本がめぼしいくらいです」

賢治は仰々しい題名とハードカバーの本を掲げた。読んでもわからないので、パスすることにした。曉に丸投げしてもいいが、今はそれどころではないだろう。

「デスクを漁ったら、本尊の位置わかったぞ」

曉は黒革の手帳を片手にドヤ顔を決める曉に、頭を抱えたくなった。

「【目星】使ったな？」

国木田の鋭い指摘にばっちりウィンクで返事をし、元々手に入れていた見取り図を開いた。【幸運】も使ったとか聞こえたが、国木田は聞こえないフリをした。

「入り口は二つ。この二階からは、突き当りの階段を降りていくと、本尊の裏に出る。そこから入る。一階は、講堂の奥にある扉から。こっちは真正面。たぶん、信徒用だと思う」

曉は物部天獄のメモ帳を勝手に物色して手に入れた情報をつけ加える。本当に容赦ない。江戸川は潜入班に共有することを告げて、そっちに向かうように指示を行った。

そして、教祖の部屋を出て、その階段の方向へ向かおうとした。

「貴様達、何者だ！！」

警備員の服装をした屈強な男たちが、数名。

まるで、小説のお約束のように、見つかってしまったのだった。

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