【文スト】続々・ネットでマフィアの首領と友達になってた件

＊ ページ35

『ひとまず社長からの指示を伝えるよ。この混乱に乗じて、本尊が安置されている部屋に行ってほしい。講堂の奥に扉があるはずだ。そこを真っ直ぐ行くと、本殿があるらしい。国木田達にもそこへ向かうように伝えてある』

太宰達は顔を見合わせると、活気だっている信徒達を横目に立ち去る。

「異能力『細雪』」

谷崎は異能を使う。その場に虚像が生まれ、五人は隠れた。

「……私の異能と被っとるやん！！」

碧海は谷崎の異能を見てぎゃんと噛みつきながらも走ったのだった。

そういえば、『細雪』を使用する前、ちらりとこちらを諏訪と藤白が見ていた気がしたが──何れにせよ、真相は群衆の中だ。

『それと、相手の目的がわかったよ。相手は───リョウメンスクナの呪いを昇華させるつもりだ。信徒全員の命を使って』

江戸川の声は不快さを隠しきれていない。だがそれよりも。

───何でもそうやけど、範囲ってのがある。それよりも上の範囲を狙うんなら、それを後押しする後的ファクターが必要やと思うんよな


アレの続きを思い出す。都市伝説では、自害による物部天獄一人の恨みによるファクターで底上げをした。しかし、結果は東京を含む南関東近域に被害を齎す大地震を起こした。これだけでも十分だが、恐らく物部天獄は物足りなかったのだ。

つまりは、天獄は"一度に、日本全土に厄災が起きる(・・・・・・・・・・・・・)"ことを祈っているのだ。戦争で言う日本全土に同時に焼夷弾の雨を降らせるといった具合といえるだろう。


──その理論だと何人くらいの贄が必要になるんだい？

──贄言うな贄と。そうだなー……


走る。ここに来て、小言が煩い同僚の顔が浮かんだ。彼が、敦に告げた言葉が過ぎった。


──確実に数百人単位は必要じゃない？複数の人(・)ならば、もっといるかもしれないけど、土地(・・)なら話は別だと思う。呪いはそもそも土地(・・)に根付きやすいって言うし


突き当りに観音開きの扉が見えた。そこへ辿り着くと、江戸川に告げる。

『……何があるかは分からない。心するように』

江戸川も太宰も既に最悪に辿り着いている。だが、その上で理解していた。

「開ける」

静かな声音で鏡花が告げる。全員臨戦態勢には入っていた。頷くと、彼女は扉を開いた。

──最悪(・・)は必ず防ぐよ、約束だからね。

祈りもまた呪い。願いもまた呪い。人の感情こそが、呪いとなる。

だが、それを跳ね返すのもまた、人の想いだ。

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